そういうわけで相手が彼女とマッチングされたのだ。
しかし、研究所の記録には、彼女の実践経験は記載されていなかった。
通常、彼女は助手として始め、一定数の手術経験を積んでから、執刀医として任せられるはずだ。
研究所が直接彼女に執刀させるのは通常の手順に反している。
【実はこの件については、研究所の教授たちが議論した結果なんです。この症例の顕微鏡手術は難度が高いものの、手術のリスクは低く、あなたの能力を十分に示せると判断しました。もちろん、手術中は研究所の他の教授も立ち会い、手術が成功しなくても不測の事態が起きないよう確保します。】
簡単に言えば、相手を佐藤和音の実力を示すための実験台として扱ったということだ。
成功すれば、佐藤和音は名を上げることができる。
失敗しても、死人は出ないし、状況が悪化することもなく、説明がつく。