第100章 理由は秋次おじいさんに任せて

上杉望は菊地秋次と佐藤和音が台所に向かうのを見て、今の状況が少し微妙だと思った。

そこで、席にいる他の人たちに言った。「申し訳ありません。佐藤おじさんたちが来られるとは知らなくて、五人分しか用意していなくて……」

五人でのバーベキューパーティーが、突然十一人になってしまった。

山田燕は慌てて言った。「望さんが私たちと一緒にバーベキューを食べることを気にしないなら、残りの食材は私が手配します。」

秋次おじいさんと一緒に食事ができる貴重な機会を、山田燕は絶対に逃すつもりはなかった。

上杉望は微笑みながら言った。「おばさん、冗談でしょう。ここは佐藤家ですから、私たちが気にするわけがありません。それでは残りの食材はおばさんにお任せします。私は先に台所に行って手伝ってきます。」

そう言って上杉望は食材を持って台所へ向かった。

台所に入るとすぐに、佐藤和音が包丁を持って肉を切っているのが見えた。

買ってきた様々な肉を、均一な厚さのスライスに切っていた。

ステーキなど厚く切る必要があるもの以外は、全て薄くスライスされていた。

佐藤隼人はホタテを開いていて、動きがちょっと不器用そうだった。

一方、菊地秋次は傍らに立って、佐藤和音と佐藤隼人の作業を見ていた。

上杉望が近づいて行くと、佐藤和音が大きな包丁を握っているのが見えた。

その肉切り用の大きな包丁は佐藤和音の手の中でさらに大きく見えた。

この状況を見て、上杉望は包丁を取り上げて、もっと小さいサイズの包丁に替えてあげたい衝動に駆られた。

しかし、この数日間和音様に引っ張ってもらった場面を思い出し、やめておこうと思った。傍らで応援する方が自分に相応しいと。

和音様は、この数日間で上杉望が佐藤和音につけた呼び名だった。

初めて引っ張ってもらった時は上杉望も戸惑っていたが、二回目になると慣れてきて、佐藤和音にお世辞を言い始めた。

ゲームの時、上杉望は「秋次おじいさんすげえ」とか「和音様かっこよすぎ」とか、上手にお世辞を言っていた。

引っ張ってもらう側らしい態度を見せなければならない。

佐藤和音が切った肉のスライスを見ると、やはり自分の心配は余計だった。佐藤和音の肉の切り方は実に安定していた。

包丁さばきが上手いかどうかは上杉望にはわからないが、少なくとも自分よりずっと上手かった。