第114章 直樹を叱る(2)

信頼から疑問へ、そして再び信頼を取り戻したものの、現実は彼に再び痛烈な一撃を与えた。

佐藤正志の声は冷たく硬かった。「彼女が何故君を騙したのか私には分からないが、彼女が君を騙したのは事実だ。証拠は目の前にある。」

目の前の証拠を見て、佐藤直樹は突然振り返り、ドアの方へ向かった。

佐藤正志は一歩早く、彼を引き止めた。

「兄さん、出して!彼女に何故こんなことをしたのか聞きに行きたい!」

「一度騙されて恥ずかしい思いをしたのに足りないのか?また騙されに行くつもりか?!」

佐藤正志は冷たい声で佐藤直樹に問い返した。

「私は...」佐藤直樹は呆然と立ち尽くした。

しばらくして、突然崩れるように泣き出した。

彼はしゃがみ込み、両腕に顔を埋め、体を震わせて泣いていた。

彼の泣き声に佐藤賢治と岡本治美夫妻は胸が痛んだ。