「何のこと?詩織のプレゼントのことを言ってるの?」佐藤直樹は佐藤正志を見つめ、目に疑問の色を浮かべた。
「そうだ」佐藤正志はまさにそのことを話させたかったのだ。
「さっき玄関先で話したじゃないか?」佐藤直樹は理解できない様子だった。
話すべきことは全て話したし、兄もあの紙袋を見たはずだ。
「今、両親の前でもう一度話してほしい」佐藤正志は傍らに立ち、冷たい眼差しで、無表情な顔をしていた。
佐藤直樹は一瞬躊躇してから、佐藤のパパとママに向かって言った。「パパ、ママ、さっき僕の家の玄関先の茂みの中で詩織が用意したプレゼントを見つけたんだ。袋は同じで、中身もセーターとマフラーだった。詩織は嘘をついていなかった。ただあの日、安田おばさんが持ち込んだ袋が自分のものじゃなかっただけなんだ」
佐藤賢治と岡本治美は眉をひそめ、気持ちが一気に沈んでいった。
佐藤正志は佐藤直樹に質問を続けた。「じゃあ、この件についてどう思う?偶然だと思うか?」
「兄さん?」
「考えていることを全部話してくれ。兄さんはお前がこの『偶然』についてどう思っているのか聞きたいんだ」
佐藤正志は馬鹿じゃない。佐藤直樹の言葉の端々からこの「偶然」に対する疑いが透けて見えていた。
そして今、彼は佐藤直樹にその疑いの部分を全て話すように求めているのだ。
佐藤正志がそこまで言うなら、佐藤直樹ももう隠す必要はないと思った。
「そうだ、これは偶然じゃないと思う。偶然にしては出来すぎている。なぜ二つの袋がたまたま同じで、中身も似ていて、置かれた場所まで同じなんだ。詩織の言う通りだ。そんな嘘をつく理由なんてない。すぐにばれる嘘だし、自分の首を絞めるようなことを彼女がする理由なんてない」
佐藤直樹は自分の疑いを全て口にした。
「それで?」佐藤正志は結論を聞きたがっていた。
佐藤直樹は長い間躊躇していた。
両親と兄を見上げた。
最後に心の中の結論を話すことを決意した。「和音が入れ替えたんじゃないかと思う。そうでなければ、なぜこんなに出来すぎた偶然が起こるのか説明がつかない」
一言一句、はっきりと。
玄関先では、彼は佐藤正志に言い出せなかった。
しかし心の中ではすでにそのような考えが芽生えていた。
佐藤直樹のこの言葉に、岡本治美の心は刃物で刺されたようだった。