藤田安広が引き受けると、研究所の関係者は千葉佳津と千葉佳津の母親が入院している病院に連絡を取り始めた。
その時、千葉佳津は研究所から離れるバスに座っていた。
電話を受けて、しばらく呆然としていた。
「千葉さん、千葉さん、お電話聞こえていますか?」
「はい、どうぞ」千葉佳津は我に返り、興奮を隠せない声で答えた。
「お母様を当研究所に転院させる必要がございます。患者の移送と手術の手続きについて、できるだけ早くご対応いただけますでしょうか」
「はい、分かりました」
「千葉さん、他にご質問はございますか?もしなければ、お母様の転院手続きの際に改めてご説明させていただきます」
「一つ質問してもよろしいでしょうか?」
「どうぞ」
「なぜ突然、母の症例を引き受けていただけることになったのでしょうか?」