第123章 初出勤(3)

通常、藤田安広は同時に二つのケースを受け持つことはありません。ただし、一つのケースが行き詰まっているか、長い反応過程を待つ必要がある場合は例外です。

少し間を置いて、藤田安広は言いました。「でも、今は状況が変わりました。」

「このバカ、一度に全部話してくれないの?若いのにどうしてそんなに息継ぎしながら話すの?」

藤田安広は佐藤和音の方を見て言いました。「和音さんが来てくれたので、状況が変わったんです。」

佐藤和音も藤田安広を見上げ、目には疑問の色が浮かんでいました。

藤田安広はにこにこしながら言いました。「私が今手がけているケースは、あなたの助けのおかげで早めに終わりそうなので、数日後には新しいケースを引き受けられそうです。」

佐藤和音はここ数日、正式に研究所に来ていませんでしたが、常に研究所のスタッフと連絡を取り合っており、その中で最も多く連絡を取り合っていたのが藤田安広でした。

そして、会話の内容の99パーセントは藤田安広の研究プロジェクトについてでした。

このプロジェクトで、佐藤和音は多くの提案とアドバイスを提供し、藤田安広は大きな恩恵を受けました。

佐藤和音の視線は自分のパソコンの画面に戻りました。

原作のストーリー展開では、千葉佳津は必ず千葉家に戻り、その時菊地秋次と宿敵になるはずでした。

もしストーリーが変わらなければ、原作の大きな悪役である菊地秋次も失敗という結末から逃れられないはずです。具体的に死ぬのか、どうなるのかは佐藤和音にはわかりませんが、良い結末にはならないでしょう。

佐藤和音は菊地秋次の親切を覚えていました。彼がどんな目的で自分を助けてくれたにせよ、何度も助けてくれたのは事実でした。

佐藤和音は再び顔を上げ、藤田安広に言いました。「古いケースは一緒にやりましょう。新しいケースも、引き受けましょう。」

藤田安広は考え深げに言いました。「和音さんが手伝ってくれるなら、今引き受けても問題ないですね。でも和音さん、今月は他にも忙しいことがあるって言ってましたよね?そんなに無理しないでください。」

「大丈夫です。」

佐藤和音は可能な限り時間を作るつもりでした。