第150章 隼人が動画を発見(1)

この音楽箱は彼の母にとって特別な意味がありました。

長年ずっとそこにあり、亡くなった祖父が母に残したものだったようです。

音楽箱を弄っているうちに小さな引き出しが開き、中からUSBメモリが落ちてきました。

佐藤隼人は少し好奇心を持ってUSBメモリを拾い上げました。

中身が気になった隼人は、それを近くにあった別のノートパソコンに差し込みました。

開いてみると中には動画が一つだけありました。

動画を再生した瞬間、隼人は凍りつきました。

画面に映っていたのは佐藤和音と佐藤直樹でした!

二人は階段の前で口論をしていて、まさか……

すぐに場面は佐藤直樹が階段から転落するシーンに移りました。

隼人ははっきりと見ました。直樹が自ら階段から落ち、和音が彼を掴もうとしましたが間に合わなかったのを。

隼人はあまりの衝撃に、パソコンの画面を見つめたまま何をすべきか分からなくなりました。

「何をしているの?」

山田燕が近づいてきて、隼人が彼女の隠していた監視カメラの映像を見ているのを発見した瞬間、急いで前に出てノートパソコンからUSBメモリを引き抜きました。

「誰が私の物に触っていいって言ったの!」

山田燕は怒りを露わにして隼人に叫びました。

山田燕がこの映像を保管していたのは、将来佐藤直樹を脅すためでした。

今この事件が和音をどれほど深く傷つけているか、将来この映像を直樹に見せた時、直樹がどれほど崩壊するか。

それなのに今、隼人に見られてしまいました。

「母さん、この映像は和音ちゃんの潔白を証明できるよ!映像を僕にください!叔父さんと従兄に見せたいんです!和音ちゃんが潔白だということを彼らに知ってもらいたいんです!」

隼人の表情は興奮と焦りが入り混じっていました。

山田燕はUSBメモリを握りしめながら、少し落ち着きを取り戻しました。

「隼人、この映像は母さんはあなたにも、叔父さんにも渡せないわ」山田燕は声を低くし、冷たい表情を浮かべました。

「どうして?」隼人には理解できませんでした。

「理由なんてないの。あの事件はもう決着がついたことよ。今日この映像を見たことは忘れなさい」

「この映像は和音ちゃんの潔白を証明できるのに、どうして見なかったことにできるんですか!母さん、一体何をしているんですか!」