第173章 隼人兄

佐藤和音が入院している間、佐藤のパパと佐藤のママがどれだけ追及しても、佐藤おばあさんは和音の居場所を教えませんでした。

三日目に和音が退院する時になってようやく、佐藤おばあさんは佐藤正志に連絡し、無料の労働力として和音を本邸まで送り届けるよう頼みました。

佐藤正志はおばあさんからの連絡を受けて初めて、和音が病室を変えて再び入院していたことを知りました。

佐藤正志は和音が小さな手足で車に乗り込み、後部座席で静かに座って、スマートフォンを手に持ち、白くて柔らかそうな指で画面をタップする姿を見つめていました。その表情は真剣そのものでした。

和音は最近の仕事の問題に心を奪われており、運転している人が誰なのか、家の運転手なのか他の誰かなのかにも気付いていませんでした。

和音の素直な様子を見て、佐藤正志は何故か胸に微かな痛みを感じました。