原おばさんが日頃から原詩織にたくさんのお金を使わなければ、もっと貯金ができたはずだった。
そして今、そのお金は全部塩漬けになってしまった!
全部……
原詩織は青天の霹靂を受けたようだった。
お金のない生活がどれほど辛いか、彼女たちは誰よりもよく分かっていた。
やっと生活が少し楽になってきたのに、まさか……
原詩織は怒りと悲しみで声を震わせた。「お母さん、株なんて今まで一度もやったことないのに、どうしてこんなことを?」
母は株のことを全く分かっていないのに、どうして突然全財産を株に投資したのだろう?
「私は……安田おばさんが株で儲けているのを見て、彼女は株で稼いだお金で市内にマンションを買って、年を取ったら老後の住まいにするって言ってて……簡単に儲かるように見えたから、私も彼女に続いて買ったの。最初は株価が上がって、一気にたくさん儲けようと思って、全部投資しちゃったの!」
原おばさんは分からなかったが、安田おばさんが大儲けしているのを見て、自分も同じようにできると思い込んでしまった。安田おばさんができるなら、自分にもできるはずだと。
「お母さん!どうして……株なんてそんな簡単じゃないでしょう!誰でも株で儲けられるなら、誰も働かないわよ!」
原詩織は怒りで目が赤くなった。
「分かったわ、もう分かったから……」原おばさんは体を震わせて泣いた。
原おばさんは自分の過ちを理解したが、もう取り返しがつかなかった。
株は塩漬けになり、お金を引き出すことができなくなった。
今や原詩織のために苦労して貯めた学費を失っただけでなく、裁判費用すら出せなくなってしまった。
原おばさんは耐えがたい苦痛に襲われた。
「お母さん、そんなに落ち込まないで。まずは対策を考えましょう。あの男との離婚を先に済ませないと。」
原詩織は最初の衝撃と怒りから立ち直っていた。
今となっては母を責めても何も変わらない。この事態に母が一番苦しんでいることを、原詩織は分かっていた。
「どうしたらいいか分からないわ、私にはもう……」
原おばさんは恐怖に満ちていた。お金を失い、あの恐ろしい男がまた現れた今、まるで十数年前に戻ってしまったかのようだった。
十数年の努力と犠牲が全て水の泡になってしまった。