「はい、はい」教導主任は佐藤和音に対してもう言葉がなかった。「じゃあ、頑張ってね!」
これ以上の言葉は、もう口に出せなかった。
教導主任も佐藤和音にこれ以上時間を費やしたくなかった。
成績が発表される時、この生徒のことは無視すればいい。その時間があるなら、学校の優秀な生徒たち、特に高校三年生の特進クラスにいる数人のトップ生徒たちの面倒を見た方がいい。彼らこそが今回の化学オリンピックで入賞する可能性が最も高い生徒たちなのだから。
教導主任は来ては去り、言葉は少なかったものの、明らかに佐藤和音を快く思っていない態度を示していた。
###
原詩織は化学オリンピックに申し込んでから、一心不乱に問題を解くことに没頭していた。
学年主任が参加申込者に配布した試験対策問題集を、原詩織は試験前に全て終わらせようと決意していた。