だから学校は佐藤和音がなぜ頑固にこの試験に申し込んだのか分からなかった。
確かに申し込みに制限はないが、このような成績が公開される試験では、彼女が何点取ろうと後ろには栄光私立高校の名前が付くことになる。
これが高校三年生の学年主任が佐藤和音に問題集を渡す時に、言葉に詰まったような表情をしていた理由だった。
クラスメートたちも佐藤和音を見る目つきが変で、彼女の謎めいた行動に興味津々のようだった。
佐藤和音は大井心の話を聞いた後、オンライン申し込みのリンクを開いた。
案の定、公式サイトの受験者リストから自分の名前を見つけた。
大井心は佐藤和音が自分の名前をじっと見つめているのを見て:「もしかして自分で申し込んだんじゃないの?」
佐藤和音の反応は自分で申し込んだようには見えず、むしろこの件を初めて聞いたかのようだった。
「私じゃない。」
「マジかよ、誰がそんな意地悪して申し込んだんだ?」大井心はこの申し込みをした人は本当に最低だと思った。もし誰かが彼女の分を申し込んでいたら、気が狂うところだった。
大井心は考えて、また不思議に思った:「おかしいよね、申し込みには身分証番号と学籍番号が必要なのに、誰があなたのこの二つの番号を覚えてるの?」
身分証番号は長いのは言うまでもなく、彼らの学校の学籍番号も異常に長い。
普通の人は自分のを覚えるのがやっとなのに、誰が暇で他人のを覚えるだろうか?
大井心は『名探偵コナン』を見た経験では足りないことに気付いた。
大井心はこの問題について考えるのを諦め、代わりに佐藤和音を慰めた:
「和音、落ち込まないで、申し込んじゃったものは仕方ないよ。試験の時は選択問題を適当に埋めれば、運が良ければ点数取れるかもしれないよ。この種の試験は点数取るのが難しいって聞いたし、中には勘で選ぶより悪い点数取る人もいるらしいよ。もしかしたら適当に選んで意外といい点数取れるかもしれないよ!」
「うん。」佐藤和音の表情は普通で、大井心が心配するような不安な様子はなかった。
大井心も彼女をどう慰めていいか分からず、ただ:「気を楽にしてね。」と言った。
「うん。」
そして佐藤和音は机の上の化学オリンピックの問題集を開いた。競技でどんな問題が出るのか見てみたかった。
大井心も覗き込んだ。