千葉佳津は佐藤和音が十分賢いと感じていた。以前の彼女の成績が良くなかったのは、勉強する気がなかったからかもしれない。しかし、彼女が学びたいと思う内容なら、すぐに習得できるのだ。
これは、この期間に千葉佳津が佐藤和音に補習をしてきた実感だった。
「確かに補習は必要ありません。補習も人によりますからね。効果がある人もいれば、時間の無駄になる人もいます」
教務主任は明らかに千葉佳津の意図を誤解していた。
千葉佳津は眉をひそめ、遠くにいる静かな女子生徒を見つめ、少し躊躇した後、彼女のために余計な説明を加えた。「先生、誤解されています。私は彼女に才能があると思っているんです」
千葉佳津は普段、多くを弁解する人ではなく、自分のことに関してもそうだった。
今日、余計な説明を二言三言することは、とても珍しいことだった。
教務主任は千葉佳津の言葉を聞いて、とても気まずい表情をした。
しかし、相手は彼が期待を寄せている有望な若者だったので、言いたいことをぐっと飲み込んだ。
それに、外部の人間に自分の学校の生徒の悪口を言うのは、自分の首を絞めることになる。
教務主任もそこまで愚かではなかった。
この時、食堂には多くの人がいて、みんなが千葉佳津に気付いていた。背が高く、目を引く容姿の彼を見過ごすことは難しかった。
千葉佳津の隣に鬼のように厳しい教務主任がいなければ、多くの生徒が彼に近づいて親しくなろうとしただろう。
原詩織も食事をする生徒たちの中にいて、また千葉佳津を見かけ、思わず彼に目が引き寄せられた。
しかし、この時の千葉佳津は大勢の生徒の中から原詩織に気付くことはできなかった。
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化学コンクールは木曜日で、参加申込をした生徒は当日、学校を休むことが許可されていた。
申し込んだ生徒として、佐藤和音は当然その日学校に来なかった。
コンクールは午後からで、他の生徒たちは午前中のこの最後の半日を使って、問題を多く見直し、復習を重ねた。
一方、佐藤和音は研究所に向かった。
今日来た目的は二つあった。一つは千葉佳津の母親の病状のため、もう一つは手術に参加して、研究所の手術過程に事前に慣れるためだった。
千葉佳津の母親の症例は、佐藤和音と藤田安広の二人が担当していた。