「もちろんよ、おりこが喜ぶなら、この古い家にずっと住んでいてもいいわ。将来、おばあちゃんがこの家をあなたに譲るから、一生ここに住めるのよ」佐藤おばあさんは胸が痛み、急いで答えた。
おばあさんは覚えていた。あの時、佐藤和音は両親に連れられてここに来たのだ。
彼女は既に一つの場所から見捨てられていた。彼女はここからも見捨てられることを恐れていた。
彼女のおりこは、一生家があり、行き場がなくなることはないのだ。
おばあさんは突然不安になった。自分は年を取っており、いつか突然この世を去ってしまい、大切なおりこを誰も守ってくれる人も、付き添う人もいなくなることを恐れていた。
###
翌朝早く、佐藤直樹は正式に研究所に入所し、佐藤正志と岡本治美が彼を研究所の病室まで送った。
受け入れを担当したのは藤田安広だった。本来ならこの件は藤田が出る必要はなかったが、藤田自身が担当を希望したのだ。