佐藤和音は開けたドアの向こうに佐藤正志の姿を見て、疑わしげな目で彼を見つめた。
ドアの前に立つ佐藤正志は、いつもの通り深い色の服装で、端正な顔には憂いの色が浮かんでいた。眉間には皺が寄り、深い眼差しをしていた。
彼は何か心配事があるように見えた。
「和音」佐藤正志が口を開き、低い声で和音の名を呼んだ。
「うん」一言返事をした後、和音は再び下を向いて仕事を続けた。
「化学コンテストで一位を取れて、おめでとう」佐藤正志は続けて言った。
「ありがとう」和音は答えた。
佐藤正志が今この時間に来た理由が和音にはよく分からなかった。さらに、もし彼が監視カメラの映像の件を持ち出したら、どう対応すればいいのかも分からなかった。ただ、これまでの佐藤正志との付き合い方を続けるしかなかった。