色、香り、味、すべてが揃っていて、見ているだけで食欲をそそられ、よだれが出そうになった。
「ゆっくり食べて」佐藤和音が注意した。
「はい」菊地秋次は口角を少し上げた。
千葉清司はこの光景を見て、驚きを通り越した感情を抱いた。
この光景は一見何でもないように見えるが、もし東京の人々が見たら、きっと皆が驚いて口を開けっぱなしになるだろう。
あの扱いにくいことで有名な秋次おじいさんがこんなに素直なの?それも若い女の子に対して。
以前、千葉清司が佐藤和音に最も興味を持っていたのは彼女の学識だった。
この瞬間以降、彼女への最大の興味と疑問は、彼女と菊地秋次との間の不思議な関係に変わった。
東京で最も気難しく、最も手に負えない秋次おじいさんと、大阪市のある天才少女?興味深い。
上杉望は菊地秋次の前の料理を見て、思わずよだれを飲み込んだ。
「和音様、僕にも一皿作ってくれませんか?」彼は食べたくてたまらなかった。
「自分の満漢全席を食べなさい」
佐藤和音が何か言う前に、菊地秋次が上杉望に冷たい視線を送り、彼のよだれを強制的に腹の中に戻させた。
「はい、はい、僕は満漢全席を食べます」上杉望は諦めて、目の前のレストランのシェフが作った豪華な料理に視線を戻した。
運命にあるものは必ずあり、運命にないものは無理に求めてはいけない。
和音様の焼きキノコは、きっと運命的に食べられないのだろう。
佐藤和音も座って、自分の肉料理に専念した。
千葉清司は新鮮さと面白さを感じながら見ていた。「秋次おじいさんはいつからキノコが好きになったんですか?」
「最近だ」菊地秋次はゆっくりと佐藤和音が作った料理を味わいながら答えた。
千葉清司は興味深そうにしばらく見ていたが、また佐藤和音に注目を移した。
菊地秋次に会いに来たのは身分上の必要からだが、佐藤和音への興味は確かに心からのものだった。
「佐藤さん、将来どの専攻を志望していますか?」千葉清司は穏やかに尋ねた。
「医学です」
「化学材料学は考えていませんか?」
「考えていません」
即座に拒否され、少しの躊躇もなかった。
千葉清司は完全に断られてしまった。
「実は化学材料学も将来性のある分野なんですよ」千葉清司はさらに佐藤和音を説得しようとした。
傍で聞いていた上杉望は驚いた。