菊地秋次、上杉望と佐藤和音は上杉家が所有する高級レストランにやってきた。
上杉望は事前にレストランのマネージャーに超豪華な個室を予約してもらっていた。
三人だけだったが、テーブル一杯の料理を注文することにした。
偶然にも千葉清司も部下たちとこのレストランで食事をしており、菊地秋次がここにいることを知ると、彼らの個室に挨拶に来た。
千葉家と菊地家の関係は良いとも悪いとも言えず、どちらも東京の有数の名門で、財力も豊かだった。
出会ってしまった以上、見なかったふりもできない。
千葉清司は千葉家の傍系で、身分的には菊地家の皇太子である彼とは大きな差があった。
だから彼が菊地秋次に挨拶するのは当然のことだった。
千葉清司が個室に入った時、中には菊地秋次と上杉望の二人しかいなかった。
佐藤和音は厨房で菊地秋次のためにキノコを焼いていた。上杉家のレストランということもあり、上杉望の一言で厨房のスタッフ全員が佐藤和音の手伝いをしていた。
「秋次おじいさん、まさかこんなところでお会いできるとは」千葉清司は菊地秋次より年上だったが、彼の前では敬意を持って謙虚に接していた。
千葉清司は二人の身分と地位をはっきりと理解していた。
「千葉さん、大阪市に何をしに来たんですか?化学コンテストで人材を募集?その年齢層は少し若すぎるんじゃないですか?」菊地秋次は気だるげな態度で、無関心そうな口調だったが、千葉清司を見る目は特に鋭かった。
菊地秋次は毎日遊び暮らす放蕩息子のように見えた。
しかし実際には、彼の目を逃れることは何もなかった。
知るべきことは全て知っていた。
「私はヨーリー化学材料研究機構の責任者ですから、化学の人材を発掘するのは私の本来の仕事です」千葉清司は世慣れた様子で落ち着いて答えた。
「それで、千葉さんは何か人材を見つけましたか?」
「実は思いがけない収穫がありました。若い女の子で、一見おとなしくて臆病そうに見えますが、知識は同年代をはるかに超えています。試験でも、その後の面談でも、私に大きな衝撃を与えてくれました」
千葉清司が話している時、佐藤和音が盆を持って個室に入り、千葉清司の後ろに現れた。
千葉清司が振り返ると、まさに彼が話していた本人がそこにいた。
これはどういう状況だろう?
千葉清司は驚きを隠せなかった。