第212章 手術前の検査(2)

藤田安広は白衣を着た数人のスタッフを連れて佐藤直樹の病室にやってきた。

「佐藤直樹さん、今日は最後の検査を受けていただきます」藤田安広は表情を引き締め、公務的な態度で言った。

藤田安広を見た佐藤直樹は、なぜか不安を感じた。

おそらく前回藤田安広に尻に打たれた注射のトラウマだろう。

白衣を着た二人のスタッフが近寄り、佐藤直樹の目にアイマスクを装着した。

「なぜアイマスクが必要なんですか?」佐藤直樹は抵抗できないものの、疑問でいっぱいだった。

「これから行う検査室には特殊な光があり、目に良くないんです。アイマスクは目を保護するためです」

藤田安広は真剣な口調で説明し、説得力があった。

佐藤直樹も信じるしかなかった。

佐藤直樹はベッドに横たわったまま病室から運び出されたが、アイマスクをしているため、どこに連れて行かれるのか分からなかった。

佐藤直樹は機器がたくさん置かれた部屋に運ばれ、しばらく待った。

足音が聞こえ、新たに数人が入ってきた。

佐藤直樹が知らないのは、新しく来た人々の中に佐藤和音がいることだった。

つまり、佐藤直樹がアイマスクを着けているのは、特別な検査があるからではなかった。

藤田安広たちが、手術を担当するのが佐藤和音だということを今は知られたくなかったからだ。

佐藤和音は佐藤直樹の検査を始めた。

アイマスクをしている佐藤直樹は、自分を検査している医師が妹だとは全く気付いていなかった。

部屋の中では佐藤直樹以外全員が研究所のメンバーで、誰一人として佐藤和音についての情報を漏らすことはなかった。

暗闇の中で佐藤直樹は不安を感じながら、どんな検査をされているのか分からないまま、じっと動かずに横たわっていた。

周りは異常なほど静かだった。

「あとどのくらいかかりますか?」佐藤直樹は小声で尋ねた。

藤田安広は傍らで事務的に答えた。「佐藤直樹さん、もう少しお待ちください。今、主治医のファズル先生が検査を行っています。明日の手術に関わることなので、慎重に検査する必要があります。どうか辛抱強くお待ちください」

この言葉を聞いて、佐藤直樹の心境は大きく変化した。

「ファズル先生?本当にここにいらっしゃるんですか?」佐藤直樹は急いで尋ねた。

声の最後が震え、興奮を隠せなかった。