第206章 服を脱いで

そして今、彼が彼らの家にこんなに深い傷を付けたことで、上杉望だけでなく、上杉望の父親である上杉晴夏までもが事態の深刻さを感じ取っていた。

菊地家の老人と天興グループの菊地おじさんが知ったら、上杉家は必ず責任を問われることになるだろう!

さらに厄介なことに、菊地秋次は自分の怪我を全く気にせず、病院にも行こうとせず、ジムで走り続けて体を酷使していた。

上杉望は泣きそうになっていた。菊地秋次が突然気を失うのではないかと心配で!

しかし今、彼も菊地秋次のボディーガードたちも菊地秋次を止めることができず、どうしようもない上杉望は佐藤和音のことを思い出した。

佐藤和音が助けになれるかどうかわからなかったが、藁にもすがる思いだった。

佐藤和音は上杉望の説明を聞き終わるとすぐに立ち上がって外に出た。

歩きながら上杉望に尋ねた:「傷の深さはどのくらい?出血量は?消毒処置はしましたか?」

隣にいたため、佐藤和音は小走りで向かい、わずか5分で上杉望と菊地秋次の前に現れた。

上杉邸には専用のジムがあり、プロ仕様のトレーニング機器が設置されていた。

今、菊地秋次たちはそこにいた。

佐藤和音は小走りで来たため、息を切らし、頬を赤らめていた。

彼女は入り口に立ち、命知らずにトレッドミルの上で走り続けている男を見つめた。

室内には暖房設備があり、運動で汗をかいていたため、菊地秋次は上半身裸で、下にはジャージを履いていた。

普段、菊地秋次は服を着ているとかなり痩せて見える。

しかし今見ると、上半身のラインがはっきりとし、筋肉の質感が明確で、それぞれの筋肉が程よく引き締まって体に密着している。

痩せすぎでもなく、過度に誇張されてもいない。

そして彼の右腕には包帯が巻かれており、中から血が染み出して包帯を赤く染めていた。

佐藤和音は入り口に立ったまま菊地秋次を見つめていた。

菊地秋次も振り向いて佐藤和音を見つめていた。

視線が交差する。

誰も何も言わず、そのまま1分ほど見つめ合った。

最後に菊地秋次は諦めたように、トレッドミルから降り、そばにあったタオルで適当に体の汗を拭った。

そして、ボディーガードが手に持っていた服を着た。

横のソファーに座り、だらしない姿勢で。

自分の腕の傷を全く気にしていない様子だった。