鈴宮玉城の話を聞き終わると、佐藤和音は即座に電話を切った。
しばらくすると、また同じ番号から電話がかかってきた。
佐藤和音は再び電話に出た。
「和音ちゃん、お兄さんよりも冷たいなんて。ただ一声『お兄さん』って呼んでほしかっただけなのに。そんなに難しいことなの?」
鈴宮玉城は困り果てた。
兄は冷たく、妹も同じように冷たい。
前世で彼らに何か借りでもあったのだろうか?
冷酷な佐藤和音にまた電話を切られないように、鈴宮玉城は電話をかけた本当の目的を打ち明けた:
「和音ちゃん、玉城兄はもう冗談言わないよ。これは重要な件なんだ。さっきダークウェブで君に関する懸賞金の情報を見つけたんだ。なんと誰かが1万元で君の隣の席の子をいじめる懸賞金を出してる!隣の席の子に仕返しをして、今後君を見かけたら遠ざかるようにさせろって。これは僕の言葉じゃなくて、懸賞金の原文そのままだよ!」
「もちろん、僕は既に懸賞金を出した人のIPアドレスを特定して、その情報を君の携帯に送ったよ。それに、その懸賞令も削除しておいた。」
鈴宮玉城はこの分野のプロで、あっという間に処理を済ませた。
鈴宮玉城の行動に佐藤和音は驚いた。
彼女は鈴宮玉城がコンピューターの専門家だということは知っていたが、この件で彼が動くとは思っていなかった。
佐藤和音は少し間を置いて、「ありがとう」と礼を言った。
さっきまで佐藤和音と奥野実里は懸賞金を出した人をどうやって見つけるか考えていたところに、鈴宮玉城が調べた情報を届けてくれたのだ。
「礼なんていいよ。今は大丈夫?」
「大丈夫。」
「大丈夫なら良かった。もし何かあったら、君のお兄さんに殺されちゃうからね!僕の命のためにも、どうか無事でいてくれよ。」
ネット上でこういうことを見つけて早急に対処しないで、佐藤和音が危険な目に遭えば、自分の命も長くないだろうと鈴宮玉城は感じていた。
「うん。」
佐藤和音は一言答えて、電話を切った。
案の定、鈴宮玉城から佐藤和音にメッセージが届いた。
メッセージには住所と、その住所に対応する家族の情報が書かれていた。
奥野実里が覗き込んで確認する。
「世帯主の秋田俊明?誰?」
「栄光高校の理事長よ。」
IPアドレスが秋田俊明の家のものなら、この件を仕掛けた人物は明白だった。