第215章 小さな友情(1)

大井心は啜り泣きながら頷いた。

彼女は本当に怖がっていた。

しばらくすると、サイレンの音が響き、警察がこの路地にやってきた。奥野実里が大井心のために通報したのだ。

奥野実里は大井心を抱きかかえてパトカーに乗せた。

奥野実里は170センチ以上の身長で筋肉質な体つきだったため、大井心を抱きかかえるのは全く問題なかった。

車に乗せる時、奥野実里は言った。「さすが私の和音ちゃんの同級生ね。本当に軽いわ。お姉さんなら二人一緒にマラソン走っても平気よ」

もちろん、体が小さい方といえば、佐藤和音の方がもっと小さかった。

あの細い手足では、車に乗るのも一苦労だった。

奥野実里は大井心を病院に連れて行き、診察を受けさせた。

不良たちは全員逮捕された。

佐藤和音は奥野実里から連絡を受けて病院に駆けつけた。

大井心の体には多くの青あざがあった。先ほど不良たちと揉み合った時についた傷だった。

大井心は目が赤く、泣いた後で、顔には涙の跡が猫の模様のように残っており、体は震えが止まらなかった。

彼女はもともと大胆な性格の女の子ではなく、このような事態に遭遇して受けた精神的ショックは想像に難くなかった。

佐藤和音が到着した時、病室にはまだ二人の警察官が大井心から事情を聴取していた。

大井心は啜り泣きながら、先ほど経験したことを話した。

それは彼女にとって苦痛と恐怖に満ちた経験だった。

佐藤和音は大井心の話を聞いて、彼女が不良たちに襲われそうになった時、不良が「佐藤和音と友達になったからだ」と言ったことを知った。

つまり、今夜大井心を襲った連中は実は自分に問題があって、大井心に迷惑をかけてしまったのだ。

大井心は彼女のせいで、本来なら経験するはずのなかったことを経験してしまった。

大井心の声と泣き方から、佐藤和音は彼女の絶望と苦痛を感じ取ることができた。

佐藤和音は人を慰めるのが苦手で、そういった経験もなかった。

しかし佐藤和音は今、何か言うべきだと感じていた。

「ごめんなさい」佐藤和音はゆっくりと言葉を紡いだ。

彼女は大井心の件について責任があると感じていた。

「ごめんなさい」という言葉は無力だったが、それが今の佐藤和音が大井心に言える唯一の言葉だった。