携帯が鳴り、佐藤正志は電話番号を確認してすぐに出た。
電話から清らかで優しい声が聞こえてきた:
「兄さん、さっき研究室にいて携帯を持っていなかったから、電話に出られなかったんです。七、八回も電話をくれたみたいですが、何か重要な用件でもあったんですか?」
佐藤正志が先に何度も電話をかけていたのだった。
「都合が良ければ、早めに帰ってきてくれないか。」
「どうしたんですか、兄さん?急に帰ってこいって。」
「和音に少し問題があってね。」
「和音がどうかしたんですか?大丈夫なんですか?病気ですか?」
電話の向こうの佐藤一輝の声は緊張に満ちていた。
「体は大丈夫だ。」
「体が大丈夫なら良かった。」佐藤一輝は少し安心したようだった。
「でも、いくつか話があって、帰ってきてほしいんだ。」佐藤正志は重ねて強調した。