第242章 突然終わった恋心

佐藤和音の各科目の試験も落第することはなかっただろう。

「ありがとう」佐藤和音は一言返した。

千葉佳津が他言することを心配してはいなかったが、秘密を守ってくれるなら、それに越したことはなかった。

千葉佳津と佐藤和音はカフェでしばらく話をした。

そしてカフェを一緒に出た。

千葉佳津も車を持っていなかったので、佐藤和音を送るという話もなかった。

ただ入口で佐藤和音に別れを告げ、彼女が去っていくのを見送った。

二人がカフェを出る時、原詩織は向かいの本屋で見ていた。

千葉佳津と佐藤和音が話している間に何度も見せた笑顔も、彼女は全て見ていた。

千葉佳津と佐藤和音は窓際の席に座っていたので、通りを挟んでいても、はっきりと見えた。

原詩織の心には、自分でも説明できない苦い思いがあった。

なぜこうなってしまうのか分からなかった。

最近遭遇した苦い出来事は、どれも佐藤和音と何か関係があるようだった。

原詩織のスマートフォンには、彼女が今撮ったばかりの写真があり、そこには千葉佳津の輝くような笑顔が写っていた。

そしてその輝くような笑顔は佐藤和音に向けられていた。

彼女は先ほど、何かに取り憑かれたかのようにシャッターを押し、この瞬間を記録した。それは心の奥底で、この一瞬に二人の間にそれほど親密な関係がないという証拠を見つけたかったからだ。

しかし原詩織が見れば見るほど、現実は彼女が望まない方向へと傾いていった。

人生で初めて、ある男性に対する胸の高鳴りが、このようにあっけなく終わってしまうのだろうか?

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原詩織は最近少し上の空で、またその写真をアルバムで見つけた。

自分がどうしてしまったのか分からなかったが、この出来事が頭から離れないような感じがした。

江口沙央梨が原詩織の後ろに来て、原詩織のスマートフォンを見た。

「この女の子、佐藤和音じゃない?」江口沙央梨は一目で分かった。

江口沙央梨が自分の後ろにいることに気付いた原詩織は、急いでスマートフォンをしまった。

「もう一度見せて、その男の人見たことあるような気がする」江口沙央梨は原詩織のスマートフォンを取ろうとした。

「何でもないわ」原詩織は江口沙央梨にスマートフォンを渡さなかった。