夢から覚めた。
佐藤和音は急いで目を開けた。
体中が冷や汗でびっしょりだった。
手を伸ばして額の冷や汗を拭った。
なぜまたこのシーンを夢に見たのか、彼女には分からなかった。
彼女が読んだ原詩織を主人公とする小説には、この場面の描写はなかったはずだ。
でも、あの感覚はとてもリアルだった。
まるで死の窒息感が目の前にあるかのようだった。
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翌朝、佐藤和音は部屋から出てきた。
自分の部屋のドアの外側の取っ手に何かが掛けられているのに気づいた。
外側は半球状のガラスドームで、中にはオレンジ色のバラが一輪、見事に咲いていた。花の形は非常に美しく、まるで今摘んだばかりのように新鮮に見えた。
これは比較的珍しい品種のバラだった。
佐藤和音は観察の結果、このガラスドームの中のバラは特殊な処理を施したプリザーブドフラワーだと分かった。
市場で販売されているプリザーブドフラワーの多くは偽物だが、佐藤和音が手にしているこの一輪は間違いなく本物で、生花から作られたものだった。
佐藤和音は半球状のガラスドームの底にラベルが貼られているのを見つけた。
ラベルの文字は力強く、優美で伸びやかだった。
佐藤一輝の筆跡だった。
佐藤和音は佐藤一輝の研究室でかなりの時間を過ごし、彼の多くの過去のノートを見ていたため、彼の筆跡を知っていた。
そこには、このバラの品種についての内容が書かれていた。
佐藤和音は手にしたプリザーブドフラワーをしばらく眺めた後、自分の寝室に持ち帰り、それから外出した。
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翌日、佐藤和音は研究所に行き、仕事の合間に、ある患者の病院診療記録を見たいという希望を奥野実里と藤田安広に伝えた。
藤田安広は和音に率直に告げた。「規則上では閲覧できませんが、正規の手続きを踏めば可能です。簡単に言えば、患者さんを私たちの研究所に転院させれば、その患者さんの全記録を閲覧する権限が得られます。ただし、もしその患者さん本人にその意思がない場合は、この方法は使えません。」
研究所への転院には患者本人の主観的な同意が必要で、研究所が強制的に相手を研究対象にすることはできなかった。
奥野実里は少し考えてから佐藤和音に尋ねた。「具体的にどの病院か知っていますか?」
「同徳私立病院です。」
「同徳私立病院ですか?」