夢から覚めた。
佐藤和音は急いで目を開けた。
体中が冷や汗でびっしょりだった。
手を伸ばして額の冷や汗を拭った。
なぜまたこのシーンを夢に見たのか、彼女には分からなかった。
彼女が読んだ原詩織を主人公とする小説には、この場面の描写はなかったはずだ。
でも、あの感覚はとてもリアルだった。
まるで死の窒息感が目の前にあるかのようだった。
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翌朝、佐藤和音は部屋から出てきた。
自分の部屋のドアの外側の取っ手に何かが掛けられているのに気づいた。
外側は半球状のガラスドームで、中にはオレンジ色のバラが一輪、見事に咲いていた。花の形は非常に美しく、まるで今摘んだばかりのように新鮮に見えた。
これは比較的珍しい品種のバラだった。
佐藤和音は観察の結果、このガラスドームの中のバラは特殊な処理を施したプリザーブドフラワーだと分かった。