江口沙央梨も佐藤和音の成績を知って近づいてきた。「詩織、あの佐藤和音を見てよ。あいつ、本当に度が過ぎてるわ。目立ちたがりで、何でもやりかねないわね。前は化学コンクールで、今度は中間テストよ。いい加減にしてほしいわ」
江口沙央梨は原詩織に小声で囁いた。佐藤直樹が学校に戻ってきていたので、声が大きすぎて聞こえてしまうのを恐れたからだ。
「考えすぎないで」原詩織はようやく冷静さを取り戻した。「どうせ私たちには何も変えられないわ。好きにさせておきましょう」
「はぁ」江口沙央梨はため息をついた。「確かに何も変えられないわね。あいつみたいな運のいい人生じゃないんだから。前は投稿くらいできたのに、今は投稿する権限すら失っちゃったわ」
前回、江口沙央梨が佐藤和音のパパ活の噂を投稿した時、すぐに削除されてしまい、その後再投稿しようとしたら、アカウントが何も投稿できなくなっていた。
そのことで江口沙央梨はしばらく不安に駆られていたが、誰にも特定されなかったことが分かってようやく安心した。
「自分のことだけ考えましょう」と原詩織は言った。
原詩織は今では無理にでも佐藤和音のことを考えないようにしていた。
今の彼女がすべきことは、勉強をしっかりとこなしながら、お金を稼ぎ、キャリアを積んで、自分と母親が安定した生活を送れるようにすることだった。
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佐藤おばあさんは佐藤一輝と対立しているようだった。
彼が不機嫌な理由を言わないので、佐藤おばあさんはあえてそれを言わせようとした。
佐藤一輝を「従わせる」ため、佐藤おばあさんは佐藤和音の送り迎えの任務を思い切って佐藤一輝に任せた。
「このお婆さん、最近体調が良くないからね。おりこの送り迎えはあなたに任せるわ。もしこの任務をちゃんとこなせないなら、これからは佐藤を名乗る資格もないわよ」
佐藤おばあさんは強い態度で、拒否の余地を与えなかった。
佐藤おばあさんから投げられた任務に、佐藤一輝は断ることができなかった。
実は佐藤一輝の心の中でも、佐藤和音のそばにいる時間を増やしたいと思っていた。
ただ...彼女を傷つけたくなかった。
佐藤和音が朝起きると、いつものように玄関にプリザーブドフラワーが置いてあった。
今日はマンドラゴラで、とても珍しい品種だった。