おじいさんの命令を受けて、佐藤一輝は袖をまくり上げ、おじいさんの手伝いを始めた。
佐藤一輝の手は白く、長年実験室にいたせいだった。
彼は花や草を扱う時の動作が非常に熟練していた。
佐藤和音は傍らで雄花の花粉を集めていた。
後で雌花に人工授粉するためだ。
蘭の種子の発芽率は極めて低いが、新品種を育てたい場合は、花粉を使って交配するのが良い選択肢だ。
祖父と孫三人は温室で楽しく忙しく過ごしていた。
佐藤おばあさんが三人に夜食を持ってきた時、三人の花好きが温室で忙しそうにしている様子を見て、思わず笑みがこぼれた。
佐藤一輝と佐藤和音の会話は相変わらず少なかったが、二人の間の雰囲気は良好だということが分かった。
これで良かった、おばあさんも安心した。
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土曜日の朝早く、佐藤のパパ、ママ、佐藤正志、佐藤直樹の四人は佐藤家本邸へ向かった。