「上杉望とです。大学でダンスパーティーがあって、彼が私の固定ダンスパートナーでした」菊地秋次は正直に答えた。
佐藤和音は振り向いて、まだその場に立っている見捨てられた・元ダンスパートナー・上杉望を見た。
上杉望は今、見捨てられた悲しみどころか、むしろ外に出て爆竹を鳴らして祝いたい気分だった。
天よ、憐れんでください!大学時代、あれほど多くの可愛い女の子たちが目の前にいたのに、ダンスパーティーで彼女たちと一緒に踊りたかったのに。
そしてあの時、学校中の女子の前で、秋次おじいさんに引っ張られて踊らされたのだ!
それ以来、彼は二度とダンスパーティーに参加しなかった!
秋次おじいさんにまた踊らされるのが怖かったのだ!面子があるのだ!特に学校の多くの女の子たちの前では!
上杉望は今日のパーティー会場で適当な相手を探し始めた。女の子と踊りたかったのだ!
上杉望はすぐに適当な相手を見つけ、上杉家の皇太子という身分と、まずまずの容姿、紳士的な態度で、順調に令嬢を自分のパートナーとして見つけることができた。
二人は順調にダンスフロアに入り、楽しく踊り始めた。
他の人々と違って、原詩織の視線は常に千葉佳津に向けられていた。
ほとんど千葉佳津が現れた瞬間から、彼女の視線は時々彼に向けられていた。
あまりにも露骨にならないように気をつけながらも、どうしても彼を見てしまう。
彼女は千葉佳津に対してもともと好意を持っていた。
今、以前よりも一層輝いている彼を見て、彼女の視線は思わず彼を追ってしまう。
原詩織の隣にいた金山若夫人は、ダンスフロアにいる佐藤和音を見つめながら、微笑んで感慨深げに言った。「佐藤家のお嬢様は本当に幸せね」
原詩織は金山若夫人を見上げ、彼女の言葉の意図が分からなかった。
「あなた、彼女と踊っている男性が誰か知らないの?彼が入ってきてから、会場中が彼を見ていたのに気付いたでしょう?」
「そうみたいですね」原詩織は先ほどあまり気にしていなかったが、金山若夫人にそう言われて、確かにそうだったと思い出した。
「あの方は他でもない、最近大阪市で話題になっている菊地家の若様、東京から来た秋次おじいさんよ」金山若夫人は原詩織に説明した。