「パン!」
岡本治美は一枚の写真を佐藤正志の前に置き、写真の女性を指差しながら言った。「この女性を探し出して」
佐藤正志はその古びた写真を一瞥して尋ねた。「誰なの?」
「あなたの叔父の元カノよ!」
「三十年近く前の話だよ。見つかったとしても、遠い昔のことすぎる」と佐藤正志は説明した。
「とにかく探してちょうだい」岡本治美は一切の言い訳を聞き入れなかった。
佐藤賢治が前に出て諭すように言った。「暖、その人を見つけたとしても、たとえその人が結婚していなくても、弟をクズ男にするわけにはいかないだろう!」
「私の娘が害を受けたのよ。もうクズ男になろうがどうでもいいわ」
岡本治美は怒り出していた。
岡本治美は父子二人が動こうとしないのを見て、いらいらしながら急かした。「手伝ってくれないの?なら他の人に頼むわ!」
佐藤正志は慌てて言った。「玉城に調べさせるよ。明日には返事するから」
「いいわ」岡本治美はようやく満足して書斎を後にした。
岡本治美が去った後、佐藤賢治と佐藤正志は顔を見合わせた。
佐藤賢治が言った。「お前の母さんは最近本当に張り切っているな。財団の帳簿を徹夜で調べるだけじゃなく、外での活動も次から次へとこなしている」
「母さん最近イライラしてるから、お父さん大変だけど、なだめてあげて」
「お前の母さんのこの怒りは、私には収められない。山田燕を潰すしかないな」
佐藤賢治は今では山田燕のことを弟の嫁とは呼ばず、名前で呼び捨てにしていた。
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山田燕は本当に発狂しそうだった。岡本治美に追い詰められて。
財団の件は終わったと思っていたのに、岡本治美はまた佐藤おばあさんに告げ口をして、財団の帳簿の穴を埋めろと言ってきた。
岡本治美が財団を引き継いでからは、一刻も休まることはなかった。
関係者全員を調査し、帳簿を一行一行チェックして、すべてを明らかにした。
最終的な穴はすべて山田燕の責任とされた。
岡本治美は山田燕に問いただすことなく、直接佐藤おじいさんと佐藤おばあさんに話を持っていった。
佐藤おじいさんはこういった事を最も重視する人物で、家族が家のためにならないことをするのを許さなかった。
山田燕はすぐに佐藤家本邸に呼び出され、質問を受けることになった。