「開けてない」
佐藤和音は千葉佳津からの贈り物なんて欲しくもなかったので、開けもしなかった。
開けてなかったのか。
上杉望は自分だったら、とっくに開けていただろうと思った。
菊地秋次はすでに目を閉じており、道中で一眠りするつもりのようだった。
数台の車が知恵医学研究所の入り口で停車し、全員が研究所の検査を受けてから中に入ることができた。
佐藤和音の番になると、スタッフは彼女の検査を飛ばした。
上杉望は驚いて見ていた。この研究所のスタッフは何なんだ?菊地おじいさんと秋次おじいさんも逃れられなかった通常の検査を、なぜ和音様は飛ばされたんだ?
年が若いからか?
それとも女の子だからか?
おかしいじゃないか!
一行が研究所に入ると、吉野教授が菊地家の者を出迎えた。
「菊地おじいさん、菊地若様、この任務は刑事局からの指示によるものですので、解剖室の外からの見学のみとなります。解剖室内に入ることも、解剖過程に直接参加することもできません」