「開けてない」
佐藤和音は千葉佳津からの贈り物なんて欲しくもなかったので、開けもしなかった。
開けてなかったのか。
上杉望は自分だったら、とっくに開けていただろうと思った。
菊地秋次はすでに目を閉じており、道中で一眠りするつもりのようだった。
数台の車が知恵医学研究所の入り口で停車し、全員が研究所の検査を受けてから中に入ることができた。
佐藤和音の番になると、スタッフは彼女の検査を飛ばした。
上杉望は驚いて見ていた。この研究所のスタッフは何なんだ?菊地おじいさんと秋次おじいさんも逃れられなかった通常の検査を、なぜ和音様は飛ばされたんだ?
年が若いからか?
それとも女の子だからか?
おかしいじゃないか!
一行が研究所に入ると、吉野教授が菊地家の者を出迎えた。
「菊地おじいさん、菊地若様、この任務は刑事局からの指示によるものですので、解剖室の外からの見学のみとなります。解剖室内に入ることも、解剖過程に直接参加することもできません」
吉野教授は菊地おじいさんと向き合う時、内心少し緊張していた。
しかし、説明すべきルールはきちんと説明しなければならない。
彼らは正規の医療機関であり、今回は刑事局からの案件なので、誰が来ても公平に処理しなければならない。
「分かっている」菊地おじいさんは頷いた。
一行と共に研究所の中へ入っていった。
上杉望は佐藤和音がまだ彼らと一緒に歩いているのに気付いた。
菊地おじいさんも不思議に思い始めた。
この少女はなぜずっと彼らについてくるのか?
一行は研究所の手術室の外室まで歩いた。
ここが臨時の解剖室として使用される。
彼らの前には大きなガラス窓があり、窓を通して中の様子が見える。
そのとき、二人のスタッフが近づいてきて、手慣れた様子で佐藤和音に外科手術着を着せ、手の消毒をし、手袋とマスクを付け、すべての防護準備を整えた。
上杉望は呆然と見つめ、思わずスタッフに尋ねた:
「何をしているんですか?なぜ和音ちゃんにこんな服を着せるんですか?」
他の人たちは必要ないのに、佐藤和音だけが特別扱いされている。
スタッフの一人が答えた:「もちろん違います。皆さんは見学者ですが、私たち医師は仕事をしに来ているのです」
「医師?どんな医師?誰が医師なんですか?」
上杉望はますます混乱した。