一方、佐藤賢治と佐藤博兄弟は老人と書斎で家族企業の件について話し合っていた。
岡本治美と山田燕は老夫人とお茶を飲みながらおしゃべりをしていた。
山田燕は今や岡本治美を見るたびに腹が立っていた。
これまでの出来事で自分が正しいと主張できず、老人夫婦の前では我慢するしかなかった。
我慢するだけでなく、笑顔も作らなければならず、義姉がこんな大きな仕事を引き受けてくれたことに感謝しているように振る舞わなければならなかった。
「お義姉さん、最近本当にご苦労様です。私の能力不足で財団の仕事をうまく処理できず、ご迷惑をおかけして申し訳ありません」山田燕は満面の笑みを浮かべた。
彼女の笑顔と言葉遣いは非の打ち所がなかった。
「財団は家族のものですから、私は佐藤家の嫁として責任があります。義妹さん、ご心配なく。財団はしっかり管理させていただきます」岡本治美の声は柔らかいが、自信に満ちていた。
続けて岡本治美は山田燕に尋ねた。「義妹さんが投資されたプロジェクトで少し問題が出ているとお聞きしましたが、お手伝いが必要でしたらいつでもおっしゃってください」
山田燕の預金はほぼ底をついていた。
もともとそれほど貯金があったわけではなく、佐藤家の次男の妻になってからは見栄を張るために出費が多かった。
そうでなければ、家族の慈善財団からこっそりお金を流用することもなかっただろう。
彼女も投資をしており、ある技術会社に大金を投資していたが、その会社が開発中のハイテク製品が行き詰まり、しばらく進展が見られない状態が続いていた。
さらに厄介なことに、競合他社が最近どういうわけか優秀な技術者を雇い入れ、高分子材料に関する技術的な問題を解決してしまった。
もし競合他社の製品が無事に市場に出れば、彼女が投資した技術会社は破産の危機に直面する可能性があり、投資金が水の泡になりかねなかった。
投資が失敗すれば、彼女にとって泣きっ面に蜂となるのは間違いなかった。
山田燕は内心歯ぎしりしながら、いつからか義姉の言葉にも毒が含まれるようになったと思った。
山田燕は笑顔で岡本治美の質問に答えた。「お義姉さんはどちらからそんな情報を?私の投資プロジェクトは着実に発展していて、将来性は非常に期待できます。順調にいけば、年末の配当も期待できそうですよ」