佐藤和音が階段を降りてきた。佐藤直樹が近づこうとしたが、佐藤明人と佐藤隼人が先に彼女のところへ行った。
そして佐藤直樹は、和音が二人と話をしている様子を見ていた。時々うなずいたり、優しく言葉を交わしたりする姿は、とても愛らしかった。
佐藤直樹は思わず幼い頃のことを思い出した。妹がグミを持って彼をなだめてくれた時のことを。
「お兄ちゃん、泣かないで。おもちゃの車が壊れたら、大お兄ちゃんが新しいの買ってくれるから。私のグミをあげる。二番目のお兄ちゃんがこっそりくれたの。私、まだ食べてないの!ママには内緒だよ。ママはお菓子を食べちゃダメって言うから、お尻ペンペンされちゃうの!」
柔らかい白い手が、グミの袋を丸ごと彼の手に押し込んだ。歯の抜けた口で笑顔を見せた。
しかし、その思い出が過ぎ去ると、今の彼は彼女からとても遠い場所に立っていた。