娘が徳望の高いおじいさんに可愛がられていることに、父親の佐藤賢治は当然嬉しく思っていた。
ただ、この寵愛の裏に何か隠された条件があるのではないかと心配していた。
彼は娘が幼いうちから商業競争に巻き込まれることを望んでいなかった。
橋本おじいさんは微笑んで、「佐藤さん、お気遣いなく。佐藤さんはその価値があります」と言った。
そして佐藤和音に向かって「中に席がありますから、お座りになりませんか」と尋ねた。
この協力期間中、橋本おじいさんは既に佐藤和音の習慣をいくつか把握していた。
彼女は大勢の人に囲まれるのが好きではなかった。
学術的な質問で囲まれるのは構わないが、雑談で囲まれるのは苦手だった。
佐藤和音は軽く頷くと、中に入って人気のない隅に座った。
岡本治美は佐藤和音に付き添って入った。彼女も娘が大勢に囲まれるのを望んでいなかった。