第12章：喧嘩が始まった

鈴木由美は馬場絵里菜が自分に強く出てくるなんて、さらに自分を嘲笑うなんて思いもしなかった。高校1年生の中で誰一人として自分にこんな口を利く者はいないのに、侮辱されたと感じた。

「馬場絵里菜、あなた死にたいの？今日、私に逆らうとどうなるか思い知らせてあげる！」鈴木由美はカバンを投げ捨て、瞬時にヤンキーモードに変身し、手を振って「やっちゃって！」と命じた。

四人の女子は言われるがまま、すぐさま襲いかかってきたが、馬場絵里菜は逃げる様子もなく、むしろ前に出て、冷たい眼差しで立ち向かった。

ちょうど校門を出たところだったため、二つのグループが争い始めると、下校中の第二中学校の生徒たちが大勢集まってきた。

鈴木由美と二人の女子が馬場絵里菜に向かって行き、残りの二人は馬場絵里菜の後ろにいる高橋桃を狙った。

鈴木由美が馬場絵里菜の腹を蹴ろうとし、他の二人は指を広げて髪を掴もうと飛びかかってきた。馬場絵里菜が相手と本気で戦おうと、理不尽な仕打ちを受けるまいと思った瞬間、彼女自身も驚くような展開となった。

鈴木由美の蹴りが来た時、馬場絵里菜は本能的に体を横に傾け、素早く攻撃を避けた。鈴木由美は馬場絵里菜がこれほど素早く避けるとは思っておらず、力を入れすぎた勢いで、右足を上げたまま前のめりに倒れていった。

「きゃあ……」

鈴木由美は思わず悲鳴を上げ、周囲の見物人の前で見事に大地の母なる懐で開脚、まさに完璧な一字マットを披露することになった。

シーッ……

見物人たちは思わず息を飲み、無意識に足を閉じた。見ているだけでも痛そうだった。

同時に、馬場絵里菜は拳を振り上げ、強い力で二人目の女子の胸を殴り、さらに足を上げて三人目の女子の腹を激しく蹴った。

この一撃の威力は尋常ではなく、二人の女子は数歩後退した後に尻もちをつき、体の中が激しく揺さぶられ、力が抜け切って、しばらくは立ち上がれそうにない状態となった。

この一連の出来事は瞬く間に起こり、馬場絵里菜の動きは滑らかで、ほとんど労力を使わずに三人の女子を倒してしまった。

誰もが驚いて目を見開き、言葉を失った。馬場絵里菜自身も呆然としていた。先ほどの反応はすべて本能的なもので、考える余裕すらなかった。

相手の数が多くても、最悪の場合は命を懸けて戦うつもりだった。少なくとも鈴木由美のような人に、自分が好き勝手にされる存在だと思わせたくなかった。勝てなくても、相手に痛い目を見せて、今後簡単には自分に手を出せないようにしたかった。

しかし、実際に戦いが始まると、まるで戦神が憑依したかのように、相手が構えを見せた瞬間に次の動きが読めてしまい、そのため簡単に避けることができた。

これは……さっき吸収した心法と関係があるのだろうか？

「きゃあ……離して！」

考え込んでいる最中、後ろから高橋桃の悲鳴が聞こえた。馬場絵里菜は我に返り、振り向くと、高橋桃が一人の女子の髪を引っ張り、自分の髪も別の女子に掴まれ、三人とも敵味方関係なく足を蹴り合い、もつれ合っているのが見えた。

馬場絵里菜はそれを見るや、素早く近づいて飛び蹴りを放ち、高橋桃の髪を掴んでいた女子を地面に叩きつけた。高橋桃は自分を拘束していた力が消えたのを感じ、強く押し返して、最後の一人も地面に倒した。