家に帰ると、細田登美子は台所で料理をしていて、ドアの開く音を聞いて娘が帰ってきたことを知った。
「絵里菜、学校終わったのね!テーブルの上にママが文旦を買っておいたから、先に少し食べなさい。夕食はもうすぐできるわ。お兄ちゃんも夕食に帰ってくるわよ。」
馬場絵里菜はカバンをソファーに投げ、スリッパを履いて台所に入った。細田登美子は鯉を捌いていて、絵里菜は近寄って見た。「ママ、煮魚?」
細田登美子は笑顔で頷いた。「そう、お兄ちゃんのリクエストよ。スペアリブも買ってきたけど、どう調理する?酢豚風?」
「いいわ」絵里菜は嬉しそうに答えた。
「外で待っていなさい。もうすぐお兄ちゃんが帰ってくるわ。」
絵里菜は自分の部屋に戻り、時計を見た。午後6時。母は普段7時頃に化粧を済ませてキャバクラに出勤し、早ければ深夜12時頃に帰宅、遅ければ2、3時になる。
このような接客の仕事は正確な時間が決まっておらず、やっかいな客に会えば身動きが取れなくなる。
前世で母は肝臓がんで亡くなった。絵里菜は母の飲酒が原因だと分かっていた。飲酒は肝臓を傷め、飲めば飲むほど悪化する。今世では同じことを繰り返させない。
しかし今すぐに母にキャバクラの仕事を辞めさせることはできない。この仕事の収入は家計の大部分を占めており、母は絶対に同意しないだろう。だから絵里菜は分かっていた。母をキャバクラから離れさせたいなら、自分の手で家の経済状況を変えるしかない。お金が母の心配の種でなくなれば、すべては自然に解決するはずだ。
だから絵里菜は今自分がすべきことが何なのか、はっきりと分かっていた。それは…お金を稼ぐこと!
クローゼットを開け、中からピンクの財布を取り出し、中身を全部出した。
自分は未来の記憶を持って生まれ変わってきたのだ。この世界の動きを他人より12年先に知っている。これこそが自分の天与の優位性だ。
将来最も儲かる業界は不動産、飲食、ナイトビジネス、エンターテインメント文化産業だ。馬場絵里菜は前世、京都で何年も奮闘し、徐々に不動産業界で地位を確立した。これが彼女の最も詳しい業界だった。
しかし絵里菜は自分の貯金を見て、冷や汗をかかざるを得なかった。全ての貯金を…合わせても…たったの…1300元!