第23章:白い狼を手ぶらで捕まえるのを責めないで

高橋桃と鈴木先生も馬場絵里菜の意図を理解した。先日、馬場絵里菜は池に落ちて、そのせいで病気になり、数日間休んでいた。

ただし、事情を知らない鈴木先生は馬場絵里菜が自分で落ちたと思っていたが、高橋桃は違った。彼女は鈴木由美が押したことを知っていた。

「はい、先生。実は先日の馬場絵里菜が池に落ちた件は鈴木由美がやったんです。彼女が馬場絵里菜を池に押したんです」高橋桃は急いで言った。まるで鈴木由美が逃げてしまうのを恐れているかのような切迫した様子だった。

その言葉を聞いて、皆は驚きの表情を浮かべた。馬場絵里菜は3組の生徒だが、彼女が池に落ちた件については、その場にいた先生たちも耳にしていた。通りかかった男性教師が間一髪で助け上げ、その後病気になったということで、この件はすぐに過ぎ去っていった。

しかし、今になって別のバージョンが出てくるとは思いもよらなかった。

「あ...あなた...嘘を...私は...」鈴木由美は慌てて、自分がやっていないと言おうとしたが、既に監視カメラで一度失敗している。もし今度も監視カメラを確認されたら、また面目を失うことになる。

残念ながら鈴木由美は今でも気付いていない。馬場絵里菜を池に押した件と昨日の午後に起きた件は、全く性質が異なるということを。

「高橋桃が嘘をついているかどうかは、監視カメラを見れば分かります」馬場絵里菜は冷たい表情で言った。彼女は本来この件を追及するつもりはなかった。既に何日も経っており、証拠もないため、追及しても意味がないと思っていた。しかし、先ほど偶然6台の監視カメラを発見し、そのうちの1台が池を映していることに気付いた。すぐに計画が浮かんだ。金持ちなのに人の道に外れた行為をする者がいるなら、騙し取られても文句は言えないだろう。

警備室長は馬場絵里菜が指定した時間の池の監視映像を再生した。映像には、ラブレターが林駆との賭けで書かれたものだと知って落ち込んでいた馬場絵里菜が、池のそばの石のベンチに座って呆然としている様子が映っていた。しばらくすると、鈴木由美が怒り狂ったように馬場絵里菜の前に現れ、話しながら指で馬場絵里菜の頭を突いている。皆には鈴木由美の言葉は聞こえないが、映像での彼女の表情を見るだけで、良い言葉を言っているとは思えなかった。