第28章:値引きして、3000万で手を打ちましょう

「絵里菜……」

細田登美子は娘のことが心配で、まだ何か言おうとしたが、馬場絵里菜に遮られた。「お母さん、外で待っていて」

先ほど娘がこの件は自分に任せてと言ったことを思い出し、細田登美子は言いかけた言葉を飲み込んだ。少し躊躇した後、馬場輝と共に取調室を出た。

ドアが閉まり、部屋の中には馬場絵里菜と鈴木強の二人だけが残された。

「君は馬場絵里菜さんだね……」

大人として、鈴木強は沈黙を破って最初に口を開いた。ビジネスの世界では先手必勝というが、示談となれば結局は金銭的な賠償の問題だ。お金が絡む問題となると、ビジネスマンの鈴木強は本能的に先に話し出すことを選んだ。「とにかく、おじさんはあなたに感謝しているよ。さっき鈴木先生から家庭の状況を聞いたところ、あまり裕福ではないようだね。こうしよう、おじさんから二百万円の補償金を出そう。どうかな?この金額なら大学まで行けるはずだよ」