二人の微妙な雰囲気を馬場絵里菜はすべて見ていた。明らかに二人は知り合いだったが、母親はそれを認めたくないようだった。
そのとき、取調室のドアが中から開かれ、鈴木由美と田中霞が先に出てきた。鈴木強を見るなり、鈴木由美は泣きながら駆け寄った。「お父さん、助けて。少年院には行きたくない。」
鈴木強は娘を抱きしめ、背中を優しく叩いて慰めた。「大丈夫だよ。お父さんがいるから何も心配いらない。」
取り調べを担当していた警察官は馬場絵里菜の前に来ると、保護者も来ているのを確認し、無表情で言った。「こちらへどうぞ。」
取調室の中は明るく照らされており、映画のような暗く重苦しい雰囲気ではなかった。事務机の後ろには椅子が二脚あり、二人の警察官が背筋を伸ばして座っていた。壁際には木製の長椅子が並べられており、警察官は手でそちらを指さして「そこに座ってください」と促した。