第25章:警察署でお茶を

「お母さんには先生が電話をしましたから、もうすぐ来るはずです」鈴木先生は馬場絵里菜の肩を優しく叩いて、なだめるように言った。

馬場絵里菜は、先ほど警備室での勢いはすっかり消え、椅子に座って穏やかな表情を浮かべていた。言葉を聞いて、鈴木先生に笑顔で頷いた。「ありがとうございます」

この件は彼女自身で対処できるものの、年齢が若すぎるため、保護者への連絡は必須だった。

鈴木先生はため息をつきながら「こんな大きな事件があったのに、どうして先生に話してくれなかったの?」

「実は本気で追及するつもりはなかったんです」馬場絵里菜は答えた。「鈴木由美が私を池に突き落としたことを見た人はいませんでした。彼女が自分で他の人に自慢したから、学校で噂になっただけです。でも結局証拠がなかったんです!今日たまたま警備室の防犯カメラが池を映していることに気付いて、自分の正当性を証明しようと思ったんです」

馬場絵里菜の言葉は確かに嘘ではなかった。最初はこの件を追及するつもりはなく、今日は全くの偶然だった。結局のところ、鈴木由美親子の行動が原因で、今日の出来事がなければ、警察署に呼ばれることもなかったはずだ。

「絵里菜!」

その時、廊下の向こうから馬場輝の声が聞こえた。馬場絵里菜が顔を上げると、母親と兄が小走りで近づいてくるのが見えた。

「お母さん、お兄ちゃん」馬場絵里菜は急いで二人の方へ歩み寄った。

この時間はまだ家の朝食店が営業中で、細田登美子はエプロンを着たままで、エプロンには小麦粉が付いていた。明らかに鈴木先生からの電話を受けてすぐに駆けつけたようだった。

「絵里菜、大丈夫?一体何があったの?」細田登美子は馬場絵里菜を見るなり目を赤くした。自分の娘は最も分別があるのに、今警察署にいるなんて、心配にならないはずがない。

「馬場さん、まず落ち着いてください。座りましょう」鈴木先生が前に出て声をかけた。

娘の担任の先生を見て、細田登美子はさらに興奮し、急いで先生の手を握りながら言った。「先生、うちの絵里菜は学校でとても素直な子だということは、先生もご存知でしょう。絶対に悪いことなんかしません」

「はい、はい、馬場さん、まず私の話を聞いてください。先ほどは申し訳ありませんでした。突然のことで、電話で詳しく説明できませんでしたが、実は事情はこうなんです……」