第031章:クラブで道に迷う

しかし事実は、馬場絵里菜は細田登美子と馬場輝に嘘をついていた。

彼女は鈴木強から実際には300万円を受け取っていたが、この時は100万円しか出さなかった。

実は馬場絵里菜は心の中で既に計算していた。昨日まで最初の資金集めに悩んでいたのに、今日になって誰かが自ら持ってきてくれた。この金について、馬場絵里菜は自分が上手く活用しなければならないことをよく分かっていた。

だから彼女は意図的に鈴木強に2枚の小切手を書かせた。1枚は100万円で、もう1枚は200万円だった。

この100万円は母親に渡すためのもので、目的は単純だった。母親にナイトクラブを辞めてもらいたかった。この100万円があれば、家族はもう金銭的な心配をする必要がなくなるからだ。

今はまだ2002年で、100万円の固定資産は一家庭にとって、すでに小康水準をはるかに超え、百万長者の仲間入りを果たしていた。

そしてもう1枚の200万円の小切手は、当然馬場絵里菜自身が起業に使うためのものだった。だからこそ彼女は実際の金額を隠したのだ。さもなければ、どんなに言い訳をしても、母親は高校生の自分が200万円を持って商売をすることに同意しないだろう。

だから全てを母親に隠して、密かに進めるしかなかった。

細田登美子は午後に家の通帳とその100万円の小切手を持って銀行に行った。その100万円が確かに自分の通帳に入金されたのを見て、細田登美子はようやくこの出来事の現実味を感じた。

全ては午前中だけの出来事で、彼らの家の預金は5万円未満から100万円になった。

そして彼女は娘との約束通り、このお金ができたら、キャバクラの仕事を辞めることにした。

夕方、馬場絵里菜は一人で家にいてベッドに横たわっていた。その小切手は彼女が保管していたが、期限切れになる前に中の金を引き出さなければならなかった。

今後のことについて、馬場絵里菜は焦りすぎないようにしていた。彼女はもともとこの世界の将来の発展傾向を理解していたので、ビジネスチャンスさえ見つければ、前世のように成功を収められると確信していた。

あっという間に日が暮れ、馬場絵里菜は時計を見ると既に夜9時で、母親は今日辞めると言っていたのに、なぜまだ帰ってこないのだろうかと思った。

上着を一枚見つけて、馬場絵里菜はそれを羽織ってすぐに家を出た。