第037章:朝食屋

自分の計画が突然現れた井上裕人によって乱されたため、馬場絵里菜はその夜眠れずにいた。母がパラダイスクラブの総支配人になったことで、以前のように酒を飲む必要がなくなったのは確かだが、これは馬場絵里菜の計画の範囲外だった。このような突然のコントロール喪失感に対して、嫌悪感までは抱かないものの、快く受け入れられるものでもなかった。

うとうとしている間に、リビングから物音が聞こえ、その後ドアの開閉する音が聞こえた。

ベッドサイドの目覚まし時計を手に取り、夜光文字盤を見ると、午前3時を指していた。先ほどの物音は、明らかに母と兄が朝食店に向かう音だった。

家の朝食店では油条、揚げ菓子、豆乳、お粥などしか売っていないが、種類は少なくても夜通し働く必要はない。向かいの肉まん店は真夜中から忙しくなることが多かった。

馬場絵里菜は今や完全に目が覚めており、翌日は学校がないことを思い出し、すぐに起き上がって顔を洗い、着替えて外出した。

明け方前の東京は一番寒い時間帯だったが、心法を吸収していた馬場絵里菜にはそれを感じることはなく、ただ習慣的に襟元の服を引き締め、月明かりを頼りに朝食店へと向かった。

通りの角には4、5軒の朝食店があった。足立区は貧民街ではあるが、人口密度は市内で2番目に高く、第一経済区域である港区に次ぐものだった。ここには貧しい家庭が多く、多くの人々が早朝から仕事に出かけるため、この通りの朝食店は安価な食べ物しか売っていないものの、それなりの商売になっていた。

朝食店のドアを開けると、細田登美子は驚いて、すぐに手の作業を止め、エプロンに付いた残りの小麦粉を払いながら迎えに出てきた。

「絵里菜、どうして起きてきたの?まだこんな時間なのに!」

細田登美子は心配そうな表情で、話しながら店のドアをしっかりと閉め、冷たい風が入らないようにした。

奥にいた馬場輝も声を聞いて顔を出し、妹を見て眉をひそめた。「熱が下がったばかりなのに出歩くなんて。こんな早朝に、ちゃんと寝てないで何しに来たの?」

叱るような言葉ではあったが、馬場輝の声には心配と思いやりが満ちていた。

「大丈夫よ、眠れなかったから様子を見に来て、お手伝いしようと思って」馬場絵里菜は笑顔で答え、声も軽やかだった。