自分の計画が突然現れた井上裕人によって乱されたため、馬場絵里菜はその夜眠れずにいた。母がパラダイスクラブの総支配人になったことで、以前のように酒を飲む必要がなくなったのは確かだが、これは馬場絵里菜の計画の範囲外だった。このような突然のコントロール喪失感に対して、嫌悪感までは抱かないものの、快く受け入れられるものでもなかった。
うとうとしている間に、リビングから物音が聞こえ、その後ドアの開閉する音が聞こえた。
ベッドサイドの目覚まし時計を手に取り、夜光文字盤を見ると、午前3時を指していた。先ほどの物音は、明らかに母と兄が朝食店に向かう音だった。
家の朝食店では油条、揚げ菓子、豆乳、お粥などしか売っていないが、種類は少なくても夜通し働く必要はない。向かいの肉まん店は真夜中から忙しくなることが多かった。