「本当に赤だわ!」
「お嬢さん、運がいいわね!」
「そうですね。当社はこれまで多くの物件を開発し、何度も割引キャンペーンを行ってきましたが、特等賞を引き当てた人は一人もいませんでした!」
数人の従業員も驚いた表情を浮かべており、明らかに特等賞を引き当てた人に初めて出会ったようだった。細田登美子と馬場輝も非常に喜び、急いで尋ねた。「これは何割引でしたっけ?」
「お姉さん、15パーセント引きですよ!」その販売員の女性は急いで答え、自分の顧客のために嬉しそうだった。
「700万円の家が、105万円も安くなるのよ、お母さん!」馬場絵里菜はすぐに割引後の価格を計算した。
「105万円も?」細田登美子は信じられない様子で、まるで天から降ってきた幸運のようだった。
みんなが興奮している時、突然、モデルルームの応接スペースから騒ぎが起こった。
「井上さん!どうされましたか?」
「救急車を呼んで、早く救急車を!」
応接スペースのソファで、白髪の老人が首を押さえ、顔は真っ赤に腫れ上がり、口を半開きにしたまま一言も発することができなかった。
周りにいたスーツ姿の人々は恐怖に満ちた表情で、電話をかける人、背中をたたく人、中年の男性の一人は特に慌てふためいて、井上さん、井上さんと呼び続けていた。
こちらのスタッフも状況を見て急いで駆けつけたが、馬場絵里菜たちは前に押し寄せることなく、外側から中の様子を見ていた。
老人の顔色は赤から紫赤色に変わり、目の白い部分も血走っており、口からは呼吸困難な音を発していた。明らかに何かが喉に詰まっていた!
馬場絵里菜はちらりと見ただけで、テーブルの小皿に置かれた接客用のキャンディーと、いくつかのゼリーに気付いた。
「井上さん、さっき何を食べられたんですか?水を飲んで押し流してみましょう!」
このとき誰かが水を持ってきて、水で井上さんの喉に詰まったものを流し込もうとした。
馬場絵里菜はそれを見て眉をひそめ、とっさに声を上げた。「だめです、水を飲ませちゃいけません!」
周りの人々はその声に驚いて振り返り、話しかけてきたのが十代の少女だと気付いた。