馬場絵里菜は思わず口角が引きつった。
この懇願するような口調は何なのだろう?しかも思いっきり使うって?
どれほどの恨みがあるというのか、他人のお金を思いっきり使うなんて!
馬場絵里菜は白川昼を無視して、まっすぐに部屋に戻り、クローゼットを開けて一番上の服の下から赤い通帳を取り出した。
リビングに戻ると、その通帳を白川昼の前に投げ出し、腕を組んでソファに寄りかかりながら、淡々とした口調で言った。「これが私の全財産よ。企業グループの設立には十分なはずよ。規模は大きくなくていいから、法人代表はあなたでお願い。」
白川昼はその通帳を手に取って見て、目の錯覚かと思い、もう一度数字を数え直してから馬場絵里菜を見つめて瞬きをした。「たった200万円?」
馬場絵里菜は冷静に肩をすくめた。「少ないのは分かってるわ。100万円を登録資本金として、残りの100万円を運転資金にする。私はまだ学生だから、割ける時間は限られてるの。だから、今後の諸々は電話で連絡を取り合いましょう。」
「ああ。」白川昼は顔を曇らせ、明らかに不満そうだった。
自分にはたくさんのお金があるのに、門主がお金を必要とするなら言ってくれれば良いのに、なぜわざわざ自分で稼ごうとするのだろう。
この時の白川昼は、まるで飼い主に見捨てられた子犬のように、すっかり不満げな表情を浮かべていた。
馬場絵里菜はその様子を見て、思わず苦笑しながら首を振った。「もういいわよ、いじめられた新妻みたいな顔しないで。私にはこの200万円しかないの。おそらく会社設立までしかもたないでしょう。最初は不動産業に参入する予定だけど、これはお金のかかる分野だから、あなたにお願いすることも少なくないはずよ。」
白川昼はそれを聞いて、やっと口角を上げ、'万人を魅了する'ような笑みを浮かべた。
馬場絵里菜は心の中で、本当に妖艶な存在だと思った。幸い自分は美男子タイプが好みではない。でなければ、毎日こんな美しい男性に笑顔を向けられ、言うことを何でも聞いてもらえるなんて、とっくに魅了されてしまっていただろう。
……
ここ数日は比較的平穏に過ぎていった。叔母の家族は既に賃貸していた家を購入し、この数日も時間を見つけては物件を見て回っていた。