第124章:オークション最大の勝者

がちゃっ……

その場にいた全員の表情が一瞬凍りついた。会場内は一時、異様な静けさに包まれた。

司会者も呆然としていたが、しばらくしてようやく反応し、カウントダウンを始めた。

「八千万円、一回目!」

「八千万円、二回目!」

「八千万円、三回目!」

「落札!」

ハンマーが下りた瞬間、呆然と立ち尽くしていた人々も我に返った。皆が振り返って見ると、八千万円と叫んだ少女は椅子に気ままにもたれかかっており、まるで先ほどの競り値が自分の口から出たものではないかのような様子だった。

馬場長生は完全に呆然としており、我に返った時にはすべてが既定事実となっていた。

八千万円!

相手は彼の競り値に七百万円を上乗せし、明らかに互角の勝負や追いかけっこのような駆け引きをする気はなく、一気に上限を封じ込めようとしたのだ。

現在の東京の土地相場を考えると、たとえこの五号地が一等地で極めて価値が高いとしても、八千万円という法外な価格には及ばないはずだ。

そう考えると、馬場長生が被害妄想を抱くのも無理はない。相手が意図的に自分に、そして馬場家に対抗しているとしか思えなかった。でなければ、なぜ自分が欲しがっていた二つの土地が、最後にこの会社の手に渡ることになったのか?

普段は喜怒哀楽を表に出さない馬場長生でさえ、今は表情を保つのが難しくなっていた。

馬場グループにもっと資金がないわけではない。出せるのだ!しかし、感情に任せて行動するわけにはいかない。それこそが、この状況を最も受け入れがたくしている理由だった。

傍らの豊田剛は思わず笑みを浮かべそうになった。この結果は予想外ではあったが、馬場グループが窮地に陥るのを見られるとは。長年のライバルとして、幸せな誤算と言わざるを得なかった。この土地は馬場長生の懐に収まると思われていたのに、まさかプログラムの神が出現し、馬場家の口から二つの美味しい肉を奪い取るとは。

この状況は、東京不動産業界で数年間君臨してきた馬場グループも予想だにしなかっただろう!

「13番の競り参加者、おめでとうございます。5号地は東海不動産が八千万円で落札しました」と司会者が大声で宣言し、これにて今回の不動産競売会は終了となった。