第125章：この娘っ子、ずる賢いねぇ

豊田剛は馬場絵里菜の前に立ち止まり、意味深な眼差しで彼女を見つめてから、ゆっくりと口を開いた。「この東海不動産について、豊田おじさんに話してくれないかな？」

豊田剛は遠回しな言い方をせず、疑問に思ったことを率直に尋ねた。

今日、馬場絵里菜も入札に参加したものの、豊田剛には14歳の少女が1億円を簡単に出せる不動産会社と結びつけることができなかった。そのため、実際には白川昼の背景について馬場絵里菜に探りを入れているのだった。

馬場絵里菜はその言葉を聞いて、人々と談笑している白川昼を振り返ってから、豊田剛の方を向いて言った。「豊田おじさん、機会があれば、時間を合わせましょう」

この明確な誘いには深い意味があった。二人には浅からぬ縁があり、馬場絵里菜が東京不動産業界に参入したばかりの今、背景の深いパートナーがいれば、事業もよりスムーズに進むだろう。

そして彼女の第一候補が、豊田剛のセンチュリーグループだった。

二人には以前から接点があり、最も重要なのは豊田剛という人物が馬場絵里菜に良い印象を与えていたことだ。当時、彼女は単に人を助けたいという思いで井上を救っただけだったが、豊田剛はすぐに感謝の意を込めて50%オフの住宅購入特典を与えてくれた。

商人は利益なくして動かないものだが、豊田剛のやり方は馬場絵里菜の目には人情味にあふれていた。このような純粋すぎない商人こそが、真の商人の真髄を理解しているのだと。

豊田剛はその言葉に一瞬驚いたが、馬場絵里菜の顔に浮かぶ含みのある笑みを見て、心が明るくなった。思わず軽く笑って頷いた。「君という子は、本当に私に大きな驚きを与えてくれたね」

明らかに、豊田剛は馬場絵里菜の正体を理解したようだった。

「それなら、豊田おじさん、私のことは内緒にしておいてください」馬場絵里菜は茶目っ気たっぷりにウインクしながら言った。

豊田剛は笑顔で頷いた。「安心しなさい。おじさんは絶対に口外しないよ」

そう言いながら、馬場絵里菜は自分の携帯を取り出した。「豊田おじさん、電話番号を教えてください。後日連絡させていただきます」

「いいよ！」豊田剛は馬場絵里菜の携帯を受け取って自分の電話に発信し、さらに尋ねた。「君の名前は？」

馬場絵里菜は豊田剛の番号を『豊田おじさん』と登録しながら答えた。「絵里菜でいいです。よもぎの絵里菜です」