第126章:あなたが可愛いからかもしれないわね

二人が談笑している間に、白川昼もその場に加わってきた。

豊田剛を一瞥すると、自ら手を差し出して「豊田会長、初めまして。東海不動産の白川昼と申します」と言った。

豊田剛はその言葉に一瞬表情を硬くしたが、白川昼と握手をすることを忘れなかった。ただ、驚いた様子で「私のことをご存知なのですか?」と尋ねた。

白川昼は眉を上げて頷き、笑いながら「私たち東海不動産は東京不動産業界に参入したばかりですので、当然しっかりと下調べをしております」と答えた。

豊田剛は納得した。目の前の白川昼は気品があり、若く見えて妖艶な容姿をしているものの、全身から上位者の威厳が漂っていた。彼と目を合わせると、自分でさえプレッシャーを感じるほどだった。

「豊田おじさん、私はこの後用事がありますので、これで失礼します。また電話で連絡させていただきます」と馬場絵里菜は淡々と言った。

豊田剛は我に返り、笑顔で頷いて「ああ、おじさんは君からの電話を待っているよ」と答えた。

それ以上の滞在はせず、馬場絵里菜と白川昼は足早に市役所の玄関を出た。

少し離れたところで、馬場長生は玄関で消えていく背中を見つめ、眉間の皺は依然として解けなかった。

今日の彼は心が塞がれていた。今でもその憤りが収まらない。1号地の放棄はまだ許容できたが、5号地を失ったことは馬場長生にとって心が血を流すほどの痛手であり、馬場不動産にとっても大きな損失だった。

傍らの秘書は、この時の会長の気分が良くないことを知っており、小さくなって横に立ち、声を出す勇気もなかった。しかし、馬場長生は突然深いため息をつき、「東海不動産について調べてくれ」と言い出した。

冷静さを取り戻した馬場長生は、今最も重要なのはこの会社の来歴と背景を明らかにすることだと理解していた。このような巨大な資金力を持つ企業は、将来必ず馬場不動産の発展の障害となるだろう。未然に防がなければならない。

秘書はようやく我に返り、急いで頷いて「はい、会長」と答えた。

車の中で、白川昼は手にある山のような名刺を適当に眺めながら、馬場絵里菜に笑いかけた。「社長、今日は私たちが大いに注目を集めましたね。さっきの人たちの熱心な様子といったら、私を生きたまま飲み込みそうでしたよ」