第131章:危機を救う

馬場依子がここまで言い切ったからには、林駆は心の中で気になっていても、彼女の顔に出すわけにはいかなかった。

むしろ夏目沙耶香は、その場で少し苛立たしげに言った。「もういいわ。今日は林駆の誕生日なんだから、誰も自分のことで台無しにしないで」そう言いながら、夏目沙耶香は意味ありげに鈴木由美を見て、さらに続けた。「誰かさんは気に入らないことがあっても心の中に留めておいて。もめごとを起こしても誰の得にもならないわ」

鈴木由美は腹立たしく思い、今や夏目沙耶香にも当てつけられ、そもそも招待されていない身で、このような面目も立たなくなり、何か言おうとした時、馬場依子に密かに服の端を引っ張られた。「由美、あまり言わないほうがいいわ!」

馬場依子は今になって鈴木由美を連れてきたことを後悔し始めていた。せっかく手に入れたこのチャンスで、林駆に近づいて彼の心の中での好感度を上げようと思っていたのに、まさか開始早々鈴木由美によって台無しにされるとは思わなかった。

雰囲気は一時的に気まずくなったが、幸いにもこの時車が止まった。

馬場依子は瞬時に興奮した表情を取り戻し、みんなに声をかけた。「みんな、降りましょう。着いたわ」

目の前には4階建てのヨーロピアンスタイルの別荘があり、外観はクリーム色で、豪華で気品があった。1階のリビングには巨大な床から天井までの窓があり、窓を通して中の豪華な内装が見えた。

別荘の外には人工プールがあり、四方の空き地はすべて整然と刈り込まれた芝生で、視界は非常に広々としていた。また、高台に位置しているため、下を見下ろすとリゾートホテルの美しい夜景も見えた。

全員が先ほどの暗い雰囲気を払拭し、目の前の別荘と周囲の景色に魅了された。

「なかなかやるじゃないか!」藤井空はその場で眉を上げ、林駆の側に歩み寄って言った。「馬場依子は本当に心を込めて準備したみたいだな。俺たちじゃこんないい場所の別荘は予約できなかっただろう」

林駆は藤井空の言葉に応えず、本能的に振り返って馬場絵里菜を見た。馬場絵里菜はちょうど夏目沙耶香が持ってきたカメラで夏目沙耶香と高橋桃の写真を撮っており、優しい横顔は非常に柔らかで、口元にも穏やかな笑みを浮かべていた。

そうして、林駆の心はようやく落ち着いた。なぜか、馬場絵里菜の気持ちが無意識のうちに彼の心を動かすようになっていた。