第160章:林駆が私のことを好きなの

ただ馬場依子は気軽に自然に言ったが、その言葉は周りの人の耳には暗示的で曖昧に聞こえた。

「病院まで見舞いに行くなんて、本当に付き合ってるってことじゃない?」

「ええ、林駆が恋愛するなんて受け入れられない!」と誰かが密かに叫んだ。

「あなたが受け入れられなくても意味ないでしょ?あなた、馬場依子ほど可愛いの?」

女子学生だけでなく、男子学生も不満を漏らしていた。

「馬場依子は転校してきたばかりなのに、もう林駆と付き合ってるなんて……」

「やっぱり美人は引く手数多だね。告白するチャンスすらなかった。」

「分不相応な望みを持つなよ……」

「鏡見てみろよ、お前なんか俺以下だぞ!」

馬場絵里菜はこれらの言葉を右から左へ流した。林駆が誰を好きなのか、今は誰よりも分かっていた。

「昨日の午後、私と藤井空も行ったわ」と夏目沙耶香は馬場絵里菜の耳元で小声で言った。

馬場絵里菜は彼女を一瞥し、最後にはやはり尋ねた。「彼の具合はどう?」

夏目沙耶香は口を尖らせた。「大したことないみたいだけど、医者は数日休養が必要だって」

そう言いながら、夏目沙耶香は表情を引き締めて馬場絵里菜を見つめた。「本当に考え直さないの?林駆は今、本気であなたのことが好きなのよ」

馬場絵里菜:「……」

彼が夏目沙耶香と藤井空に話したの?

首を振りながら、馬場絵里菜は淡々とした表情で言った。「考えることなんて何もないわ」

夏目沙耶香はそれを聞いて興ざめした様子でため息をついた。馬場絵里菜が一体何を考えているのか分からなかった。たった一度の告白の失敗で、林駆を完全に見限ってしまうのだろうか?

でもこういうことは無理強いできない。友達として精一杯取り持つことしかできないが、今は男が思いを寄せても女が気持ちに応えない状況で、主導権は完全に馬場絵里菜の手にあった。

三時間目の授業が終わると、馬場依子も鈴木由美に廊下の隅に引っ張られた。

「由美、どうしたの?」

鈴木由美の表情が良くないのを見て、馬場依子は心配そうな表情を浮かべ、大きな目をパチパチさせながら、無邪気な顔をした。