細田登美子はまだ状況を把握できておらず、どんな表情をすればいいのか分からないまま、ただ自分の心臓の鼓動が明らかに速くなっているのを感じていた。
もう片足が冥土の土を踏んでいると思っていたのに、思いがけず希望が見えてきた。
あと数年生きられるという希望ではなく、完治できるという希望だった。
「この病気は時間との勝負です。今すぐ入院手続きをしてください。午後に帰って必要な準備をして、明日入院です」宮原重樹は話しながらパソコンで細田登美子の登録を済ませ、支払い伝票を渡した。「まず保証金を払ってきてください」
細田登美子が支払い伝票を持って診察室を出ると、宮原重樹は急いで片膝をつき、恭しい口調で馬場絵里菜に向かって言った。「門主!」
馬場絵里菜は驚いて、急いで宮原重樹を立ち上がらせた。「立って、立って」
心の中で溜息をつく。やっと白川昼の安易に跪く習慣を直したと思ったら、今度は宮原重樹だ。
十二衛の他のメンバーも、こうやって彼女に跪くのだろうか?馬場絵里菜は、跪かれすぎて寿命が縮むのではないかと心配になった!
「これからは私に跪かないで」馬場絵里菜は表情を引き締め、断固とした口調で言った。
宮原重樹の表情にはあまり変化がなかったが、門主の言葉には絶対に逆らえない。すぐに頷いて答えた。「承知いたしました」
馬場絵里菜はようやくほっと息をつき、柔らかい口調で尋ねた。「母の状態はどう?」
宮原重樹の医術についてまだ直接的な理解がなかったため、馬場絵里菜はまだ心配していた。
「門主、ご安心ください。奥様の状態は私の予想よりもずっと良好です」宮原重樹は淡々と答え、明らかにがんなど大したことないという態度だった。
宮原重樹の自信に満ちた様子を見て、馬場絵里菜の心も落ち着いてきた。
「門主は携帯をお持ちですか?」宮原重樹が突然顔を上げて馬場絵里菜に尋ねた。
馬場絵里菜は一瞬戸惑ったが、すぐに頷いてポケットから携帯を取り出して渡した。
宮原重樹は受け取ると、素早く自分の番号を登録し、馬場絵里菜に返しながら言った。「私の番号を登録しました。奥様のことについては、今後門主が直接私に連絡してください。白川昼に伝言を頼む必要はありません」
白川昼の名前を出した時、宮原重樹の声には一瞬の嫌悪感が混じっていた。