細田登美子はまだ状況を把握できておらず、どんな表情をすればいいのか分からないまま、ただ自分の心臓の鼓動が明らかに速くなっているのを感じていた。
もう片足が冥土の土を踏んでいると思っていたのに、思いがけず希望が見えてきた。
あと数年生きられるという希望ではなく、完治できるという希望だった。
「この病気は時間との勝負です。今すぐ入院手続きをしてください。午後に帰って必要な準備をして、明日入院です」宮原重樹は話しながらパソコンで細田登美子の登録を済ませ、支払い伝票を渡した。「まず保証金を払ってきてください」
細田登美子が支払い伝票を持って診察室を出ると、宮原重樹は急いで片膝をつき、恭しい口調で馬場絵里菜に向かって言った。「門主!」
馬場絵里菜は驚いて、急いで宮原重樹を立ち上がらせた。「立って、立って」