第165章:馬場輝が見つかった

馬場絵里菜は足を止めて振り返ると、林駆が自分に向かって早足で近づいてくるのが見えた。

少し驚いた。林駆はまだ入院しているはずではなかったか?

馬場絵里菜は林駆の後ろを見た。黒いベンツが停まっており、スーツを着た運転手が車の横に立ち、手にはスクールバッグを持っていた。明らかに林駆を退院させに来たようだった。

「クラスメート?」細田登美子が疑問を投げかけた。

馬場絵里菜が頷いたが、言葉を発する前に、林駆が近くまで来ていた。

「おばさん、こんにちは」馬場絵里菜の母親に会ったことはなかったが、林駆は礼儀正しく挨拶をした。

馬場絵里菜の目元が細田登美子によく似ていたので、二人の関係を推測するのは難しくなかった。

細田登美子は微笑んで頷いた。傍らの馬場絵里菜は眉をひそめながら尋ねた。「退院するの?」

林駆は笑顔で頷き、整った白い歯を見せた。「大した問題はないんです。医者は二日ほど休養するように言いましたが、病院にいるのが辛くて、家で休もうと思って」

林駆の様子が良好で、本当に大丈夫そうだったので、馬場絵里菜はようやく軽く頷いた。

「どうして病院に来たの?具合でも悪いの?」林駆は気遣うような口調で尋ね返した。

馬場絵里菜も隠さず、細田登美子を一瞥してから淡々とした声で答えた。「母に付き添って来たの」

それを聞いて、林駆は理解したように頷いたが、礼儀正しく余計な質問はせず、代わりに馬場絵里菜に言った。「学校に戻るの?送ってあげようか?」

午前中の林駆と馬場依子の噂を思い出し、馬場絵里菜はほとんど考えることなく首を振った。「結構よ。早く家で休んで。時間は大丈夫だから、自分で帰れるわ」

他人に林駆の車から降りるところを見られでもしたら大変なことになる。

細田登美子がいたこともあり、林駆も無理強いはしなかった。「そう。じゃあ、先に帰るよ」

言い終わると、林駆は細田登美子に「おばさん、失礼します」と一言告げてから、車の方へ早足で戻り、ドアを開けて中に滑り込んだ。

車が馬場絵里菜の傍らを通り過ぎる時、後部座席の林駆は彼女に手を振った。

車が見えなくなってから、細田登美子は我に返ったように娘に尋ねた。「あの男の子、あなたと仲が良さそうね」