二人とも同じクラスの目立たない存在だったが、林駆のことが好きだった。
しかし、自分の境遇や家柄の関係で、林駆に近づくことはできなかった。彼女たち二人と同じような状況の女子生徒は第二中学校に数え切れないほどいて、その多くは林駆の周りにいる唯一の女子である夏目沙耶香を通じて彼に近づこうと考えていた。
でも夏目沙耶香は頑固で、というかこれらの人々の目的が顔に書いてあるようなものだったので、夏目沙耶香が簡単に利用されるはずがなかった。
しかし今は状況が違っていた。林駆は馬場依子と付き合うようになり、夏目沙耶香はもはや林駆の周りの唯一の女子ではなくなった。夏目沙耶香と比べると、馬場依子は美しく優しく、お嬢様らしい態度を全く見せず、誰に対しても優しく話しかけ、とても温厚だった。
鈴木玲美と吉田清水は自分のことをよく分かっていて、林駆が自分のことを好きになることはないと知っていた。だから今は馬場依子に近づき、もし馬場依子と友達になれれば、いつか林駆とも友達になれるかもしれないと考えていた。
彼女たちのような目立たない存在にとって、林駆と友達になれるだけでも十分満足だった。
馬場依子は二人のお世辞を聞きながら、内心得意になっていたが、表面上は拒否するような表情を見せた。「そんなこと言わないでください。私もあまり注目されたくないんです。クラスメートがいつも陰で私を見ているのが、とても居心地が悪いんです。」
吉田清水はそれを聞いて周りを見回し、冷笑を浮かべながら馬場依子に言った。「依子さんが可愛いからですよ。この人たちはただ羨ましがって妬いているだけです。気にしないでください。」
「そうそう。」鈴木玲美も負けじと続けた。「あなたが来た初日から、うちの学校の男子たちの間であなたは女神だって噂になってたんですよ。可愛いだけじゃなくて、雰囲気も素敵だって。」
馬場依子は二人に言われて顔を少し赤らめ、恥ずかしそうな表情を見せた。「もうそんな話はやめましょう。早く食べましょう。」
一方、藤井空は遠くにいる馬場依子を見て、不機嫌そうに言った。「この馬場依子は故意にやってるんじゃないか?はっきりしない話をして、説明もしないで。まだ午前中なのに、林駆がいない間に自分が林駆の彼女になったって噂を広めて、もう皆が知ってる。」