翌日、細田登美子は馬場輝に付き添われて、第一病院に入院した。
馬場輝の顔の傷を見た時、細田登美子は驚いたが、馬場輝は気にする様子もなく、バーで喧嘩をしたと素直に認め、表面的な傷だから大したことはないと言った。
そのため細田登美子は外で事を起こさないように少し注意しただけだった。自分の息子のことはよく分かっているので、心配はしているものの、それ以上は何も言わなかった。
馬場絵里菜は学校に通っていたため、細田登美子は自分の病気が娘の勉強に影響を与えることを心配し、わざわざ病院に来る必要はないと言い聞かせた。
馬場絵里菜は素直に従い、週末だけ病院に母を見舞いに行くことにした。何より宮原重樹がいるので安心できたし、宮原重樹は毎日電話で母の様子を報告してくれるため、病院に行かなくても状況をよく把握できていた。
金曜日の放課後、馬場絵里菜は白川昼から電話を受け、一緒に夕食を食べながら会社のプロジェクトについて話そうと誘われた。
本来なら母を見舞いに行くつもりだったが、明日は週末だと思い、白川昼の誘いを受けることにした。
ただし、今回の食事の場所はレストランではなく、白川昼の家だった。
「いい匂い!」
玄関に入るなり、美味しそうな香りが漂ってきて、馬場絵里菜は思わず深く息を吸い込んだ。途端にお腹が空いてきた。
白川昼は部屋着とスリッパという気楽な格好で、馬場絵里菜のカバンを受け取って玄関脇に掛け、微笑みながら言った。「山本陽介の料理の腕は国際美食協会の認定を受けているんだ。れっきとしたミシュラン三つ星シェフなんだよ。」
馬場絵里菜は驚いて尋ねた。「本当?」
前回、山本陽介がパンを焼けることは知っていたが、気が散って焦がしてしまったので、まさかミシュランシェフだとは思わなかった。
「もちろん本当さ。」白川昼は綺麗な狐目を細めて、冗談めかして言った。「そうでなければ、なぜ彼を側に置いておくと思う?」
テーブルには既に様々な料理が並べられており、どれも極めて繊細で、一品一品がまるで芸術品のようだった。馬場絵里菜はようやく白川昼の言葉を信じ、心の中で山本陽介に謝罪した。これまで山本陽介の主な仕事は白川昼の運転手だと思っていたが、まさかこんな素晴らしい隠れた才能を持っているとは。